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2020.03.24 留学生採用の課題

新型コロナウイルス汚染の世界拡散によって21卒の採用活動は、見通しが全く不明となった。世界経済や日本の景気回復、オリンピックの見通しも読めず、採用活動のスケジュールだけでなく、採用計画見直しや内定取り消しの動きも表面化、誰もが暗中模索状態だ。

そこで今回は、当面の採用活動でなく、今後の採用活動の課題である留学生採用の現状と課題を整理してみよう。

▼まず留学生の就職状況である。政府は2008年に「グローバル戦略」の一環として2020年までに外国人留学生を30万人に増やすという計画を発表。それから10年余、日本企業のグローバル化とアジア経済の目覚ましい発展に伴い留学生の数は順調に増加。2018年には、ほぼ目標を達成した(正確には29万8980人、日本学生支援機構調べ)。

だが、留学生の数は増えたものの、卒業後、留学生たちが政府の期待ほど多く日本では就職していないという課題が残った。日本学生支援機構によると2017年の外国人留学生のうち大学卒業者総数は2万4636人。そのうち国内就職者数は8623人で就職率は35.0%だった。留学生の65%が日本での就職を希望しているだけに、この就職率は残念な結果だといえよう。

▼何が問題なのだろうか。留学生が日本企業への就活で困ったことを経産省「外国人留学生の就職及び定着状況に関する調査2014年」から多い順にあげてみよう。

1.留学生向けの求人数が少ない 
2.就活の仕組みがわからない 
3.日本語による適性試験や能力試験が難しい 
4.業界や企業研究の仕方がわからない
5.日本語での面接対応が難しい  
以下略 

上記の問題のいくつかは、日本人学生と同様に留学生本人の就職への取り組み姿勢だが、企業としては留学生の応募を増やすために次の4つの課題に取り組んだらどうだろうか。

【課題1】留学生向け採用情報の充実
「留学生向けの求人数が少ない」から就職しない、というのは、留学生たちの企業研究不足と企業側の努力不足が背景にある。企業は新卒の採用に当たっては、留学生の応募も可とすることが多いが、それを留学生たちが知らない。留学生を可とする表示がないからだ。そこで企業は、留学生を本気で採用したいのなら留学生に留意した採用PR、ホームページ作成、採用イベントなどを充実させて応募者を増やす工夫をしてほしい。

例えば採用活動では就職サイトに参画するだけでなく、自社のホームページに留学生向けの採用情報(採用職種や採用実績、採用予定人数、選考方法)の公開や留学生向けのメルマガ発信や入社案内を作成したりすることである。

なかでも重要なのは、留学生向けインターンシップや就職イベントの開催である。とくに留学生向け企業セミナーなどは、他企業と連携して大学や地域で共同開催するなど、留学生の採用人数が少なくても工夫をしながら留学生にアピールしてほしい。

【課題2】適性・能力検査の見直し  
留学生が、日本企業に就職したいと思っても応募をためらう理由の一つに「日本語による適性・能力検査が難しい」というのがある。ここでの留学生たちの悩みは、適性・能力検査が難解なのでなく、設問や選択肢の日本語が難しく実力を発揮できないからだ。とくに設問にある語彙や言い回し、比喩が理解できないという。数理分野では、複雑な事例の設問が多く、速読し、論理的に解答することが難しいともいう。

しかも、これほど留学生を悩ませるわりに企業の重視度は「参考程度」という。留学生の能力が一定水準であることを確認するだけなら、簡易な能力検査あるいは、コンピテンシー(行動特性)を見るテストのほうが、企業・学生の双方にとって良いのではないか。

【課題3】日本語能力レベルの明確化
「日本語での面接対応が難しい」という留学生も多い。日本企業で仕事をするのだからある程度の日本語能力は必要だが、企業が要求する日本語能力レベルが高すぎる。

採用面接での応答は必須としてもグループディスカッションなどデータを読みながら企業の経営課題や時事問題などを日本人学生と議論させるのは、どうだろうか。議論に参加して、合格水準の持論を展開できる留学生は、稀だろう。選考や面接では、コミュニケーション能力や熱意などを自分の言葉で話せるかどうかだけでよいのではないか。

だから日本語の論作文や会話力については、要求レベルを下げて、具体的に日常会話程度とか、日本語検定N1レベルとかを明示したほうが良いのではないか。企業が要求する日本語能力レベルの明示があれば、留学生の就活準備の負担は軽くなり、多くの応募者を集めることができるだろう。

【課題4】採用目的の明確化と採用方法の見直し
かつて企業が、留学生を採用する目的は、企業のグローバル化に伴って留学生の語学力や母国との海外事業を開拓・拡大するということが多かった。しかし、最近は企業の採用目的が変わってきた。

経産省の調査(2016年)では、大企業の場合「国籍を問わずに優秀人材を採用」という回答が最も多く、次いで「社内の多様性を高める」というダイバーシティ採用が続き、「海外事業開拓・拡大」というグローバル人材の採用は3番目、以下「専門能力で事業の高度化」、留学生の母国への海外事業を開拓・拡大を目的とした採用(ブリッジ要員採用)など採用の目的が、多様化してきた。

それだけに選考方法や採用基準も一律ではなくなった。にもかかわらず企業は、留学生の採用基準を日本人の総合職と同じかそれ以上ということにこだわっている。もっと柔軟な採用方法や採用基準に取り組むべきだろう。

例えば、採用方法の見直しということでは、就職サイトでの採用広報は不可欠だが、学内説明会や合同説明会という「待つ採用」だけでなく、紹介会社(エージェント)への依頼、リファラル(紹介)採用、ダイレクトリクルーティングなど「攻めの採用」や留学生を対象としたSNS(クチコミサイト)の活用などもそれぞれ有効だろう。

▼このように留学生の採用には、改善点が少なくない。採用人数が少ないから
片手間という企業もあるが、採用すると決めたからには優秀人材を数多く採用し、長く勤めてもらいたいはずだ。

現在、進行中の「日本再興戦略」においては、外国人留学生(高度人材)の日本国内での就職率を現在の3割から5割まで向上させるというのが目標である。この留学生採用は、グローバル化や労働力不足への対応ということだけでなく、これからの5G時代に向かう日本企業や社会にとっての大きな課題である。

*今年2月、こうした留学生の採用について文部科学省、厚生労働省、経済産業省と大学、産業界、支援事業者等のプロジェクトチームは、「外国人留学生採用ハンドブック」を策定した。

内容は、外国人留学生採用についてのチェックリストや先進企業の事例を紹介した実践的なもので、これを活用することで企業の留学生採用は、一段と本格化しそうだ。(夏目孝吉)

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