2022.08.09メールマガジン

就職活動の受験化が進んでいると感じる理由

就職活動の受験化が進んでいる。そう考える理由を説明するために、近年の調査データや学生コメントから感じる就活動向を挙げておきましょう。

ただし、全ての大学生に当てはまる動向ではありません。「いまの大学生は~」という大きな主語で就職活動を語ると、様々なズレや誤解が生じます。ここでは「早期から就職活動(インターンシップ)に動き出す大学生」を中心に説明します。

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<早期から就職活動(インターンシップ)に動き出す大学生>

[1]インターンシップに向けて動き出すタイミングが早まっている
[2]早期選考につながるインターンシップを狙って参加する学生が増加(主に難関大学の学生)
[3]就活マナーや選考スキルの向上が期待できる対策プログラムの人気が高い
[4]早期から新卒エージェントの利用が目立つ
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親世代にとっての大学受験は、学力試験を経て入学する「一般選抜」が当たり前という感覚でしょう。しかし、今や一般選抜で入学する学生は49.5%と半数を割り、過半数の学生は「学校推薦型選抜」や「総合型選抜(旧 AO入試)」で進学しています(※)。

企業人にとっては耳慣れないものもあるかもしれないので、簡単に説明しましょう。

「学校推薦型選抜」には公募制と指定校制の2種類あり、この2つはシステムが大きく異なります。公募制は「スポーツ実績や文化活動、取得資格など」を条件とするケースが多く、倍率には幅があります。一方、指定校制は校内選考で選ばれることが肝となります。

「総合型選抜(旧 AO入試)」は、大学が求める学生像に合った人物を面接で選抜する形式で増加傾向にあり、今後も増加が予想されています。

同じ大学に進学しても合格までのルートは様々で、偏差値などの学力以外の基準でも合格を手にすることができる。比較的楽なルートと苦労するルートが存在し、それを知らないと損することがある。こうした学生視点の体験が、彼らの選抜イメージを形づくっているように思います。つまり、仕組みを理解して、自分が対応できる効率的なルートを見つけることで就活を攻略できる。そんな感覚を持っているように感じるのです。

実際、今の就職活動は似た環境と言えます。採用直結型インターンシップ、早期選考につながるインターンシップ、早期応募が案内されるキャリアイベント、3月以降の本選考、他にも逆求人サイトや新卒エージェントなど、内定を得るためのルートは多種多様です。「自分にとって最もメリットがあるのはどれか?そのために何をすればよいのか?」。そんな攻略的思考になるのも理解できます。

戦略的に選抜をクリアするアプローチは仕事でも生かせるので、否定されるものではないでしょう。ただ攻略的思考で就職活動をとらえると、「より早く、より大手の内定を得る」ことが勝ちという認識になりがちなことが気になります。早いタイミングからターゲット(志望企業)を決めて選考情報を集める。早期選考につながるインターンシップ情報を、SNSなどを駆使して収集する。そうして内定までの最短ルートを探す。近年の就活動向[1]~[3]は、こうした思考が背景の一つにあるのではないでしょうか。

[4]においても、大学受験の影響を感じます。塾や予備校では個人データを元に、入試アドバイスを個別指導でおこなうことが一般的です。自分に適した学習方法の指導、条件に合った大学のピックアップなど、個別に提供されるのが当然という感覚で言えば、個別カウンセリングで自分に合った(?)企業を紹介してくれ、求める人物像を反映した面接トークをアドバイスしてくれる新卒エージェントは、今の大学生にとって親和性が高いのでしょう。

支援サービスを上手く使いこなしているのであれば問題ありません。

しかし、新卒エージェントを利用できている学生は少なく、ほとんどの学生は利用されているように見えます。採用担当者→営業→カウンセラー→学生という情報伝達の途中で、大切な企業情報が少しずつ抜け落ちていく構図を、一部の新卒エージェントからは感じます。該当する内定学生がいる企業は、是非1on1で改めて丁寧な面談をおこなうことをお勧めします。

「ついこの前までは大学受験だったのに、もう就職を考えなければならない。でも、自分のためなので頑張りたい」(大学1年生のコメント)。「大学受験」を「高校受験」、「就職」を「大学受験」と置き換えても違和感はありません。1年生から就職に役立つ資格、スキル、大学生活について教えてほしいという相談は、珍しいものではなくなりました。選抜を攻略するための具体的な手法があると思っているし、求めてもいるのでしょう。

「内定を一つ持っていれば余裕も出るので、倍率が高くない早期選考につながるインターンシップを口コミサイトで探しまくって応募した」(大学4年生のコメント)。このコメントからは本人のキャリア観が全く見えてきません。最短で内定を得るためのテクニックを語っているように聞こえます。内定を一つ獲得した後、改めて自身のキャリア選択について考えてくれればよいのですが・・・。

「企業の選抜するときの視点は違う」「就活は受験じゃない」。口でいくら説明しても、経験したことのない感覚なので、本当に腹落ちすることは稀です。物事を理解するには、適した発達段階があります。幼児期に思春期の心の機微が分からないのと同じです。就職活動を経て、社会人として仕事をするようになって、初めて分かる感覚があるのでしょう。焦らずに成長を見守っていきたいと思います。
〔就職情報研究所 所長 平野 恵子〕

※令和3年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2020/1414952_00003.htm

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