2022.05.31メールマガジン

25年卒インターンシップはどうなる?!-「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」報告書に対する23年卒学生の反応

今、新卒採用市場で注目を集めている報告書があります。

2022年4月18日に「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」から
リリースされた「産学協働による自律的なキャリア形成の推進」の報告書です。
その中で触れられている、2025年卒以降のインターンシップに関する提言に
ついて、今、特に注目が集まっています。

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▽参考
[採用と大学教育の未来に関する産学協議会]2021年度報告書
産学協働による自律的なキャリア形成の推進(2022年4月18日)
https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/039.html
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概要としては、対象や日数などの条件はあるものの、
「インターンシップ期間で得た情報を、3月以降の採用選考の評価情報として
活用してよい(2025年卒以降)」とするものです。

世の中は今、2023年卒の本選考真っただ中・・・という一方で、
すでに2024年卒のインターンシッププレサイトがOPENし、各企業も今夏の
インターンシップ・プログラムの設計・告知の準備を始めています。
このタイミングで上記リリースは、2024年卒向けインターンシップ設計する
うえで重要な情報となったことは間違いありません。2025年卒を見据え、
テストケースと捉えて、プログラムを再検討する企業も少なくないでしょう。

この報告書はまだ結論が出ていないものであり、企業・大学・学生の反応が
出そろうにはまだ時間がかかると思われます。
弊社では、就職情報研究所で毎年発行する「新卒採用戦線 総括」資料内で
掲載すべく、今年の7月ごろに三者(企業・大学・学生)に向けた調査を
実施予定です。

その中で「ブンナビ」ではいち早く、就活中(終了)の2023年卒学生に向けて、
「5月定例アンケート」にて本件についての賛否・意見を調査いたしました。
非常に面白い結果となりましたので、皆様と一緒にこの結果について
見ていきたいと思います。

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■アウトライン■
【1】前提:報告書で触れている内容について
【2】学生の反応【概要】
【3】学生の反応【詳細】
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【1】前提:報告書で触れている内容について
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報告書では、産学連携・協働による人材育成や、社会から見た大学での
「学び・働き方の課題の対応」などが広く触れられています。
その中で今回「新卒採用」に大きく影響を与えそうなものが「インターンシップ
の扱い」です。

●報告書で触れられている「インターンシップ」に関する内容
・インターンシップに類する取り組みをを4種に再定義
・うち「タイプ3」「タイプ4」については、取得した学生情報を採用活動に
活用可(25年卒以降)(活用は解禁後)
・「タイプ3」については細かい定義や基準(準拠マーク)まで議論進行

※「タイプ3の」主な基準
日数5日以上/就業体験必須/出社必須(テレ併用可)/社員参加必須/
学業配慮日程での開催(夏季・冬季・春季休校期間)

「タイプ3」は、いくつかの基準はあるものの、それをクリアするプロラムが
完成すれば、すぐにでも運用可能になります。
企業によっては、過去に実施していたプログラム内容に戻すことで、ある程度
基準をクリアできる場合もあるでしょう。

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【2】学生の反応【概要】(2023年卒向け5月定例アンケート)
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「今までだってすでに・・・」「建前と本音」という議論は、ここでは置いて
おきましょう。
この情報がリリースされたことにより、ある程度のチューニングによって
「公に採用選考に活用可」という未来が見えてきたことが、注目されている点
です。

この対象はあくまで2025年卒以降のため、学生の生の声を拾うことは難しい
ですが、実際に2023年の就職活動を進めている学生の反応が、一つの参考に
なると考えます。

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▼TOPICS
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[1]報告書の内容に「賛成」64.4%、特に理系は68.2%と文系(62.8%)より
賛成派多数。
▼学生コメント▼
「実質インターン選考経由の内定を出す企業があり、現行のルールが形骸化し
ている。」「公にしていないだけで、秘密裏に活用していたと思う。情報公開
されたと考えると企業と学生の立場は平等に近づいたと思う。」
「正直羨ましい。 インターンシップやオンライン説明会、直接説明会に伺って
も、私たちは影響がないため、 25年卒の方々が羨ましい。」

[2]仮に自分が25卒だとした場合の、このルール下での就活の動き出しは
「かなり早まる」最多で、文系55.6%・理系64.8%。
▼学生コメント▼
「大学3年の9月から始める予定が大学3年の4月に変わる。」「大学3年の5月に
始めていたが、大学2年の末頃から始める。」「大学3年の7月に始める予定
だったが、大学2年の10月ごろに変わる。理由は、なるべく多くの企業の
インターンシップに参加したいから。」

[3]夏~年内の就活(インターン)が忙しくなることについては「反対」が
過半数(56.0%)だが、ここでも理系は50.0%と真っ二つ。
▼学生コメント▼
【賛成】
「大学の授業がオンデマンドのため、就職活動の両立は厳しくないから。」
「4年になったら卒論を書くことになるため、できれば早く就活を終わらせたい。」
【反対】
「サークルも勉強も満喫したいから。」
「大学は就職予備校ではなく研究機関であるから。」

細かく見ていきましょう。

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【3】学生の反応【詳細】
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[1]学生はおおむね賛成、特に理系学生が好意的
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●一部報道の通り、現在検討中の議論として、「インターンシップでの学生
評価情報を、公に採用選考の評価(3月以降)に活用できるようになる」という
可能性があります(2025年卒以降、現在は禁止)。
これについてどう思いますか。(択一)
───────────────────
全体 賛成:64.4% / 反対:35.6%
文系 賛成:62.8% / 反対:37.2%
理系 賛成:68.2%★/ 反対:31.8%
───────────────────
全体で見て6割超が賛成という結果ですが、特に理系学生が好意的に
受け取っているようです。

▼学生コメント:賛成▼
・「現在も選考に関係ないといいながら、参考にしているから。」
(福岡大学・文系・女性)
・「実質インターン選考経由の内定を出す企業があり、現行のルールが形骸化
している。そのため活用したところで現状と変化がないように思われるため。」
(京都大学大学院・理系・男性)
・「(23卒でも)優先選考があるという企業をよく見かけました。参加すれば
よかったと思います。」(大東文化大学・文系・女性)
・「インターンシップは企業が学生のことをよく知ることができる機会でも
あり、学生のことをより正確に評価するために、そこで得た情報を採用の
参考にすることは構わないと思う。」(横浜市立大学・理系・女性)
・「面接という高々30分の対面よりも共に働いて見出した学生の価値の方が
役立つ。」(九州大学・理系・男性)

▼学生コメント:反対▼
・「学業やサークル活動などでどうしても参加できない人が不利になるから。
大学生活が就活に占める割合が余りにも大きくなるから。さらに地方格差が
広まると考えるため。」(同志社大学・文系・女性)
・「志望業界が変わった場合に不利になってしまうため。」
(名城大学・理系・女性)
・「地方学生と都市部の学生における参加の機会が均等ではないため。 私も
そうだったが、私の所属は就職活動のために100万程度の貯金をするのが
通例である。 特に長期インターンは金銭的にも肉体的にも大きな負担であ
る。 ここにおいて機会が均等である条件ならば上記の議論は賛成できる。」
(九州大学大学院・理系・男性)

また、同時期に聞いた「インターンシップと採用選考のつながり」については、
全体的に見て、理系学生が「つながっている&つながっていてほしい」と
とらえているようです。

●インターンシップは、採用選考につながっていると思いますか。(択一)
───────────────────
全体 はい:85.9% / いいえ:14.1%
文系 はい:85.2% / いいえ:14.8%
理系 はい:87.5%★/ いいえ:12.5%
───────────────────

●インターンシップは、採用選考につながっていてほしいと思いますか。(択一)
※インターンシップと採用は直結していてほしい
───────────────────
全体 はい:66.9% / いいえ:33.1%
文系 はい:64.8% / いいえ:35.2%
理系 はい:71.6%★/ いいえ:28.4%
───────────────────

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[2]このルールが運用されれば、就活のスタートは早くなる
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「かなり早まる」「やや早まる」を合計すると、全体で8割以上が「前倒しに
なる」と予想しました。
早い動き出しがとりやすい文系学生と比べ、理系学生にとってはその「差」と
いう意味でも大きな変化予想となりました。

●仮にあなたが25卒と仮定して、上記の通り2025年卒以降「企業がインターン
シップでの評価情報を、公に採用選考の評価に活用できるようになる」とした
場合、あなた自身の就職活動のスタート時期はどうなると思いますか。(択一)

文系 理系 全体
───────────────────
55.6% 64.8% 58.5%★ かなり早まる
31.6% 19.3% 27.8%★ やや早まる
11.2% 13.6% 12.0%  変わらない
0.5%  2.3%  1.1%  やや遅くなる
1.0%  0.0%  0.7%  かなり遅くなる
───────────────────

▼学生コメント▼
・「エントリーについて、3年の6月に始めていたものが2年の3月に変わる。」
(早稲田大学・文系・女性)
・「大学3年の7月に始める予定だったが、大学2年の10月ごろに変わる。
理由は、なるべく多くの企業のインターンシップに参加したいから。」
(北里大学・理系・男性)
・「大学3年の5月に始めていたが、大学2年の末頃から始める。」
(福岡大学・文系・女性)

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[3]授業・研究などの影響には反対だが・・・
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制度としての新ルールは歓迎ムードですが、現実的なスケジュールに落とし
込むと、その反応も少し変わるようです。
一転して「反対」が多くなり半数を超えて56.0%となりました。しかしながら
ここでも理系は賛成と反対が同数となり、全体的に見ても「理系学生の方が
新ルールを受け入れている」という結果となりました。

●仮に、夏~年内の就活スケジュール(インターンシップ開催等)が過密に
なると、授業・ゼミ・課外活動・研究などへの影響も考えられます。
それをふまえて、夏~年内の就活(インターン)が忙しくなることについて
どう思いますか。(択一)
───────────────────
全体 賛成:44.0% / 反対:56.0%★
文系 賛成:41.3% / 反対:58.7%
理系 賛成:50.0% / 反対:50.0%★
───────────────────

▼学生コメント:反対▼
・「大学生の本分は大学での勉強や活動。 就職のために大学に行っている
わけじゃない。」(恵泉女学園大学・文系・女性)
・「実際就職活動を気にするあまり学業に集中しずらくなってしまったし、
ゼミ生で欠席ばかりになる人も多い。」(早稲田大学・文系・女性)
・「理系目線から言うと学部は忙しく院生は就活に力を入れることが出来る。
早めのインターンでは学部が不利になると感じるから。」
(九州工業大学・理系・男性)
・「ただでさえ研究室を休むのが難しい中で、そこにインターンシップの
義務感が生まれるとますます両立が困難になる。」
(近畿大学大学院・理系・女性)

▼学生コメント:賛成▼
・「早く忙しくなれば、その分早く終わると思うから。」
(名古屋工業大学・理系・女性)
・「業種によっては今年度もそうだったので、変わらないから。」
(法政大学・理系・女性)
・「企業のことをあまり知らずに受けるよりは、多少忙しくても企業を知り
自分にマッチしたところに入社した方が、学生のためになると考える。」
(ものつくり大学大学院・理系・男性)
・「人生の大切な意思決定のタイミングになるかと思うので、十分な時間を
かけて取り組むことに賛成。」(法政大学・理系・男性)
・「忙しいが、しっかりマネジメントし参加している学生はいる。就職活動の
意識が高い学生は苦しい環境でも努力するので忙しくはなるが、賛成である。」
(兵庫県立大学・文系・男性)
・「大学の授業がオンデマンドのため、就職活動の両立は厳しくないから。」
(慶應義塾大学・文系・女性)

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いかがでしたでしょうか。
当事者の学年ではないまでも、ある程度就活を乗り越えたからこその、
反省点もふまえた生の声・感想といえると思います。
また、この世代が「先輩」となって、後輩にアドバイスしていくことも
無視できないでしょう。
現在、理系の学部生の方は、院進により25年卒になることも考えられます。

新ルールの情報はまだ出そろっておらず、それに対しての企業・大学の反応も
まちまちです。また、すべてのインターンシップが「タイプ3」のようになる
わけでもありません。

現在進行中の議論を注視しつつ、今までのアドバイスや戦略を見直すことが
重要と言えるでしょう。

なお、本調査(5月学生アンケート)は現在集計中です。
集計版が完成いたしましたら、オフィシャルHPやプレスリリースにて
公開いたします。

https://www.careerpartners.co.jp/laboratory/

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最後までお読みいただきましてありがとうございました。
〔ブンナビ編集長 間宮 康之〕

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