2022.01.11メールマガジン

2021年の振り返り ~気になった5つの話題~

新卒採用に関わっていると、22年卒や23年卒といった言葉を日常的に使うため、「リアルはまだ2021年!」と驚くことがよくあります。気になった5つの話題を紹介しつつ、2021年を振り返ってみたいと思います。

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◆新卒からジョブ型、生産性向上へ経団連案 春季労使交渉

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF261Y10W1A120C2000000/
※有料紙サイトのため、ご覧いただけない場合もあります。
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以前から「ジョブ型」は話題になっていましたが、今年は一部企業で導入が進みはじめ、さらに耳にする機会が増えました。同時に、言葉の混乱も深まっているように思います。

一口にジョブ型と言っても、欧米型の雇用制度を指すのか、メンバーシップ型をベースにした役割等級的な日本独自のジョブ型を意味しているのか、職種別(コース別)採用を示しているのか、使い方がまちまちで、文脈から察しなければならないことが多々あります。人によってイメージしているシステムが異なるため、シンポジウムなどの意見交換の場では、労働問題の専門家と採用担当者で話が噛み合わなかったり、互いの都合良い解釈で言葉だけの合意形成がなされたりするケースもありました。

ちなみに、来年の春闘に向けては「ジョブ型」による中途採用の拡充をさらに進める姿勢を明確にしています。それは「新卒一括採用の見直し」を意味します(※1)。新卒採用でも「高度人材」だけに絞る方針を打ち出した企業もあります(※2)。新卒採用という言葉が表すシステムも、徐々に多様化していくのかもしれません。合意形成を求められる場では、より丁寧な対話が求められそうです。

※1
『経団連「新卒一括採用見直し加速』促す方針』日テレNEWS24
https://news.yahoo.co.jp/articles/97aa1c49f4f5700a3c60553a93773bc7234ad54f

※2
『GMOが新卒採用で「高度人材だけを採る」意味』現代ビジネス
https://news.yahoo.co.jp/articles/bad160ff12ed860f83f7fa6722a82e9178ee9987

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◆「インターンシップ」採用選考を視野に入れた評価を行えるようにすべき

https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/syukatsu/syukatsu718/
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経団連と主要大学で構成された「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」が4月に発表した『ポスト・コロナを見据えた新たな大学教育と産学連携の推進』(※3)には、「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」の説明として、「主として採用選考を視野に入れた評価材料を得ることを目的に、企業の職場等で学生が一定期間、実際の業務に従事するプログラムである」と明記されています。つまり、インターンシップ情報を採用選考に活用する方向性を示したわけです。

それが影響しているのかは分かりませんが、インターンシップ応募時の事前選考を強化する動きが強まっています。弊所『新卒採用戦線総括2022』で、23卒生への事前選考の予定を尋ねたところ、「22年卒より増やす」が18.8%で、「22卒より減らす」(0.8%)を大きく上回りました。事前選考とインターンシップの評価を合わせれば、内定出しの判断も可能でしょう。今後、採用との関係を強めていくのであれば、それにより生じる課題への対応策も、合わせて考える必要がありそうです。

※3
https://www.keidanren.or.jp/policy/2021/040.html

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◆残業はないが成長もない「ゆるブラック企業」が多い業界、少ない業界

https://diamond.jp/articles/-/208868
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残業はあまりないし、職場の居心地も悪くない。そんな労働環境が整ったホワイト企業に就職したいと考える学生は多いでしょう。しかし、一部には「ゆるブラック企業」と呼び、敬遠する動きが出ています。大手企業に入れば一生安泰・・・という時代ではなくなりました。自分の付加価値を気にする学生が増えています。激務でも高いスキルが身に付く仕事をしたい学生にとって、ホワイト企業も「ゆるブラック」というわけです。

働き方改革の影響で、修羅場経験を積める職場が少なくなったことも影響しているのでしょう。コンサル企業の人気上昇も、その現れと言えそうです(※4)。学生から見た「良い企業」も、多様化の時代になってきました。

※4
『就活で人気、コンサル 若手社員の本音は転職前提』Nikkei Style
https://style.nikkei.com/article/DGXKZO68966710Z00C21A2XS5000/

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◆就活生を探るSNS調査、どう思いますか? 賛成2割、反対5割

https://digital.asahi.com/articles/ASPDB6S1CPD1PTIL03H.html?iref=pc_ss_date_article
※有料紙サイトのため、ご覧いただけない場合もあります。
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いわゆる「裏アカ」問題です。これはSNS利用が当たり前になった時代の新しい問題と言えるでしょう。『職業安定法第5条の4』では、個人情報の収集範囲は本人の同意がある場合もしくは正当な理由がある場合を除き、『業務の目的の達成に必要な範囲(採用業務に必要な範囲)』に限定されています。一方、新卒採用では人物重視と言う言葉がよく使われます。

“人物”情報が選考に必要となれば、SNS情報だけでなく、収集対象は無尽蔵に広がりかねません。エントリー時の規約で同意を得ていても、そこまでの対応を想像している学生は少ないでしょう。

「家族の職業」「思想、信条、宗教」といった情報がNGであることは、すでに多くの人々に浸透しているため、大きな問題になることはありません。しかし、SNSという新しい情報カテゴリーが生じたことで、何を何処まで情報収集して良いのか・・・という古くて新しい問題が注目を集めるようになりました。従来の法解釈では対応しきれない事象が増えたことも、今年の特徴と言えそうです。

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◆今の就活生を悩ませる「ガクチカ問題」

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/87957
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新型コロナの影響で、大学生活は大きな制約を受けました。自粛要請のため、課外活動が満足に行えず、ガクチカ(面接の定番質問「学生時代に力を入れたこと」の略)難民という言葉まで生まれました。

これを機に課外活動だけでなく、学業について質問する「学業ガクチカ」も定着させてはどうだろうと、あちらこちらで提言しているのですが、力及ばず大きなムーブメントには至っていません(苦笑)。大学教育における新しい取り組みは増えていて、学生の特性や強みが分かるエピソードはたくさんあるはずです。今後も地道に「学業ガクチカ」推しを続けていこうと思います。

従来の“当たり前”が変わり始めた1年と言えそうです。変化はストレスにもなりますが、希望にもなるでしょう。

皆さまにとって、2022年が希望多き年となりますよう心よりお祈りいたします。
本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
〔就職情報研究所 所長 平野 恵子〕

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