2020.11.24メールマガジン

21採用を総括する

当社の「新卒採用戦線総括2021」(以下、本調査と略)がまとまった。すでに21採用の特徴的な動きについては、学生モニター調査や本メルマガなどでレポートしてきたが、あらためて本調査に基づいて今年の企業の採用活動を総括してみよう。

1.採用市場は買い手市場に逆転したが、企業には実感なし
コロナ禍の中で採用市場が、売り手市場(学生優位)から買い手市場(企業優位)になったという認識が企業に広がったのは当然だが「買い手市場」になった、と明確に回答した企業は3%と少なく、多くは「買い手市場(企業優位)に移行しつつある」との慎重な認識にとどまった(41.9%)。

むしろ「どちらともいえない」という認識が26.3%もあることに注目したい。今後の少子化の進行、優秀人材の確保など採用難が気になっているのか、企業優位の実感がないようだ。

2.採用予定数は変更せず昨年並みに採用した
21採用が始まった直後に企業は、コロナ禍に見舞われたが、その後各企業は、当初の採用計画を変更することなく採用活動を進めた。本調査によれば21採用では、昨年より採用数を減らすとした企業は増えたが、多くは昨年並みの採用を行ったと回答した。その企業の比率は、54.6%でほぼ昨年並み(53.4%)だった。

こうした企業は、コロナの影響がなかった(読めなかった)のか、すでに採用活動が始まっていてブレーキが掛けられなかったのか、不況期でも新卒採用は継続するという採用方針を堅持した企業だったのか、さまざまの事情があったようだ。しかし、コロナの影響は甚大なので、22卒の採用計画では大きく見直されるはずだ。

3.新しい採用形態として通年採用とリファラルが台頭
コロナでオンライン採用が急拡大したが、採用形態としては従来の定期採用がほとんどで大きな変化はなかった。しかし本調査を見ると新しい採用形態が台頭し、新卒一括採用がほころびかけている。

なかでも注目されるのが22卒から本格的に導入するとみられる通年採用の動きで、昨年の16.1%から21.4%に増加、通年採用時代の到来を示唆している。このほか、社員などによる紹介制度であるリファラル採用もコロナ下で注目された採用形態だったが、これも10.9%から14.7%に増えている。新しい動きとして注目される。

4.インターンシップが通年化した
21卒を対象としたインターンシップでは開催時期の分散化が進んだ。8月以前の早期開催件数の増加とともに9月以降からから今年の1月までの開催件数が、各月とも昨年より1割増だった。とくに12月の開催件数は昨年比2割増となった。

さすがに今年の2月にはコロナの直撃を受けて開催件数は激減したが、21卒採用では、年間を通じてインターンシップは活発で、インターンシップの通年化が大きく進んだ年となった。

5.会社説明会は激減したが参加者は増加
コロナ汚染が拡大し始めた2月には、大型の合説や対面型の会社説明会は激減したが、企業の多くが少人数の会社説明会や会社説明会をオンラインに切り替えて開催した。それでも開催件数は昨年を大きく下回ったが、オンラインによる参加学生数が増加したことが想定外だった。

学生にとってオンライン説明会は参加しやすいというメリットが多くあったからだが、企業にとっては思いがけない成果になった。

6.企業の内定出しは1か月遅れで決着
早期から採用活動をしていた企業は4月末までは、昨年以上のピッチで早期内定を出していたが、コロナ汚染が急拡大した3月から採用活動を本格化させた企業は5月の最終選考を躊躇することになった。しかし5月下旬からオンラインで最終面接を実施することでスケジュールを再開。6月上旬一気に内定を出した。

それでも今年の内定出しのピークは昨年より遅く、大手企業は7月上旬にようやく内定を出し終えた。これは昨年より1か月遅かった。

7.企業の採用満足度は大幅増加
大混乱した21採用だが、企業の採用満足度は、なんと昨年より大幅増だった。本調査によれば「エントリー者の人数、質ともに満足」という回答が昨年の36.4%から52.9%に激増、反対に「エントリー者の人数、質ともに不満」という回答は、21.6%から10.6%に減った。

コロナによって学生たちが就職を真剣に考え、数多くの企業に応募し、面接で真摯にふるまったからだろうか。

8.最終面接もオンラインで実施した企業が6割
今年の採用活動では、9割以上の企業が、オンラインによる採用活動をしていた。だが、どのような採用活動をして、どの段階でオンライン選考を導入したかは、企業によってかなり違っていた。

ステージ別にみると一次面接が91.2%でもっとも活用が多く、次が会社説明会で82.3%、二次面接から最終面接前までの面接が76.3%。逆に少ないのは、グループディスカッションの4.7%だった。注目の最終面接をオンラインで行った企業は61.4%と予想外に多かった。

コロナ回避を徹底したというのが企業の言い分だが、学生側は最終面接だけは、対面にしてほしかったという声が39.2%もあった。企業として留意すべきことだろう。

9. オンライン採用は、採用業務にプラスだった
オンライン採用は、採用業務にプラス効果があったのか、企業にとって今年の採用活動での大きな課題だった。オンラインセミナーの場合、その結果は、
〔1〕地方学生の参加が増えた73.0%
〔2〕会社説明会の参加者が増えた48.4%
〔3〕採用業務の負荷が軽減した47.0%
と多くの企業がプラス効果ありと回答した。

マイナス面では、学生から物足りなさを指摘されたり次の選考ステップを求められたりしたが、4割の企業がとくにマイナス面はなかったと回答していた。興味深いのは、マイナス面として「採用業務の負荷が増大した」と回答した企業が1割程度あったことだ。HRテクノロジーを使える人材がいる企業と人材のいない企業で明暗が分かれた。

10.企業は、オンライン選考をミスマッチにつながると懸念
オンライン選考によって採用のミスマッチは増えるのだろうか、この点も今年の採用活動の総括として重要なポイントだった。本調査では、学生・企業・大学にそれぞれ「オンライン選考がミスマッチにつながると思うか」と聞いている。

その結果は「とても思う」という回答が学生33.0%、企業22.3%、大学キャリアセンター13.7%だった。学生はオンラインでは自分の魅力や熱意が伝わらずミスマッチになると思っている。

注目は大学キャリアセンターの回答。オンライン採用を信頼しているようだ。企業のほうが大学より「思わない」が少なく、オンライン選考はミスマッチにつながると懸念している。

11.オンライン採用の不足感は、社員との接点がないこと
採用活動がオンライン化することで企業、学生ともに不足感、不満が生じている。学生の場合は、実際に働くイメージや就活の実感がわかないとかライバル学生の姿が見えないことが不安などと、緊張感や刺激のなさが不足感となっているが、企業の場合は社員と学生との接点がない、自社の魅力を伝える場としてアピールが十分できない、学生の熱意・緊張感を感じ取れないといった声が多かった。

12.新卒採用のオンライン化に企業は否定的
今年のように採用活動がオンライン化することを企業はどう感じているのか。「大歓迎」と回答した企業は、わずか3.6%。これは意外だった。それでも「やや歓迎」は35.3%もあり、合計すれば約4割が歓迎派。

これに対して「あまり歓迎しない」37.9%と「否定的」13.8%という否定派は5割あった。企業の間にはオンライン採用に賛否両論が相半ばしていることがわかる。これに対して学生は「大歓迎」が22.0%、「やや歓迎」41.8%とあり、合計すれば6割強、オンライン採用歓迎だ。

企業にとっては、コロナの汚染拡大でやむを得ずオンライン採用に踏み切ったのだという姿勢が見える。だから今後、コロナ汚染の収束状況によっては、オンライン選考から対面型に戻ることも予想される。しかし、コロナ汚染が完全に抑え込むことができない現状では、オンライン採用の限界を認識しながら企業は、オンラインによる採用を継続していくのだろう。(夏目孝吉)

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