2020.09.15メールマガジン

インターンシップもオンライン化して22採用がスタート

今年の3月から急拡大した新型コロナウイルス感染によって、21年卒の採用活動は、大混乱となった。この時期、多くの企業は、すでに会社説明会や面接をスタートさせていたからだ。そのため企業は、コロナ回避策として採用活動を対面型からオンライン型に急遽、切り替え、3月から5月の採用活動を乗り切った。そして6月下旬、採用計画未達企業が続出する中で、大手企業は、早々と22年卒を対象にした夏インターンシップの募集を始めた。その案内を見ると、その多くがオンライン型インターンシップだった。夏以降もコロナ再燃が危惧されただけに採用活動が従来の対面型からオンライン型に移行する動きとなった。

こうしたオンライン採用について、これから就活を開始する学生たちは、どう受け止めているのか、先に発表された当社の「22卒ブンナビ学生アンケート調査」*(以下、本調査と略す)を手掛かりに今年の夏インターンシップの現状を見てみよう。

毎年、夏インターンシップの募集が始まるのは6月中旬。今年は、この時期は、まだコロナ禍の最盛期で、多くの企業にとっては、コロナの影響が大きく、次年度の業績見通しが立たず、採用計画も未定だった。それだけに当初、夏インターンシップに関する企業側の動きは鈍く、戸惑いがあった。しかし、夏インターンシップは、次年度のプレ採用活動として最重要イベントであるだけに21採用の目途がついた企業から次々とインターンシップの募集を開始、7月中旬には本格的に夏インターンシップが動き出すことになった。

本調査によれば、今年の8月中旬までにインターンシップに参加した学生は、40.5%に達した。これは相当な参加率といえるが、昨年同時期と比べると、実に12.6%も下がっている。大きく出遅れているのだ。すなわち昨年は、53.1%の学生が8月中旬にはインターンシップ参加経験ありだったからだ。なぜ、こんなに減ったのか、学生の就職意欲や行動力が後退したのではない。企業のインターンシップ開催件数が減ったからだ。コロナの影響を受けた企業が今後の業績との兼ね合いで採用計画を未定にしたり、採用活動を遅らせたりしたからである。これは、大学キャリアセンターや就職情報会社などの調査でも明らかだが、今年の夏インターンシップの開催件数は、昨年より1割程度、減っている。だから学生たちは、参加したくてもチャンスがなかった。それだけに22卒学生のインターンシップへの参加意欲は、昨年以上だった。

本調査によれば、8月中旬までのインターンシップ参加状況は、40.5%だったが、今後のインターンシップへの学生の取り組みは積極的で、「これから参加」が28.5%(昨年より2.8%増)、「応募中」20.3%(10.2%増)、「未応募だが参加したい」9.4%(1.4%増)と学生たちのインターンシップへの意欲はこれまでになく旺盛なのである。その背景には、コロナ再燃への恐れがあり、就活のチャンスがあれば、早期からすべての就職イベントに全力投球する姿勢があるからだろう。

では、今年の夏インターンシップは、どのように行われたのか。本調査では、8月中旬までに学生が参加したインターンシップの開催形式と開催期間を明らかにしている。開催形式とは、従来からの対面型のリアルか、それともオンラインかである。その結果は、オンライン形式が50.6%、リアル形式が26.2%、両方(併用形式)が23.2%だった(択一で回答)。昨年の夏には、オンラインでインターンシップを実施する企業はごく一部だったが、今年は、ほとんどの企業がオンライン型に転換したのである。

次にインターンシップの実施期間は、どれくらいか。これは、オンライン、リアルの区別はない。「1日インターンシップ」が81.5%(昨年は、87.4%)、「2~4days」は27.5%(22.0%)、「5days以上」は11.6%(11.0%)だった。今年の夏もやや減となったが「1日インターンシップ」が圧倒的に多かったのである。

だが、そのオンラインインターンシップのプログラムとは、どんな内容だったのか、本調査には、学生からの報告があるので、いくつか紹介しよう。

・担当者が自社の事業内容や経営戦略を動画で説明、その後、若手社員たちの話を聞き、学生と質疑応答をする内容だった
・チームに与えられたお題に対して若手社員とディスカッションを行い、最後に一人一人がプレゼンをする
・各部門の社員たちが登場、会社の強みや社風を語り、そのあとは、短時間の個人ワークを行い、最後は、学生同士でグループディスカッション
・会社と業界の説明が前半にある。そのあと、社員がメンターとしてつき、学生6人でグループワークを行った。モニターの画面を追いながら話すのでテンポがずれ、パソコンの操作もうまくいかず、議論がかみ合わなかった。最後に、メンターからのフィードバックがあったが、モニター越しだったので少しも盛り上がらなかった

どれも従来の対面型のプログラムを画像化しただけのプログラムが目に付く。たしかに現在の映像技術では、学生たちが指摘するようにオンラインで就業体験をリアルに体感させるのはハードルが高いだろう。それでも一部の企業では、3D空間認識技術やVRやMRなどの仮想空間体験技術を使ったインターンシップを開発しているが、まだまだ実用化はしていない。今後のオンラインインターンシップに特化した技術の向上や優れた演出家の登場を待つしかないだろう。

こうしたオンラインによるインターンシップの現状に学生は満足しているのか、それを聞いているのが次のデータ。
「大変満足」 18.3%
「まあまあ満足」 54.3%
「普通」 18.8%
「やや不満」 7.2%
「不満」 1.4%
不満は1割もない。大半は、「まあまあ満足」で大変満足は2割弱だった。不満はないがそれほど満足もしていない。オンラインへの抵抗感はないというよりコロナ回避のためには当面、やむを得ないということかもしれない。

こうして22卒採用の夏インターンシップは、その多くがオンライン型で開催され、9月末には終了する。そして10月からは、コロナの汚染状況を見ながらのプレ採用活動の第二ステージがスタートする。これから予定されている秋、冬のオンラインインターンシップでは、併用型が中心になるだろうが、オンラインだけでも就業体験をもっとリアルに体感できるようになるだろうし、会社説明会では、課題である社風を紹介するオンライン手法が開発されるかもしれない。今年の春の採用選考で最も普及したオンライン面接も来年には、Zoomだけでなく、AIを組み込むことで見た目や挙動だけでない視点からの人物判定が可能になるだろう。これらオンラインによる採用活動は、今後、改良をかさねることでコロナの収束状況にかかわりなく確実に発展していくことになるだろう。(夏目孝吉)

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