2020.08.18メールマガジン

22卒採用がスタートしたが、学生たちは不安がいっぱい

コロナ汚染の終息が見えない中で22卒の採用活動がスタートした。21卒の採用が混乱の中で、昨年より1か月遅れの6月末に決着、7月下旬から22卒を対象とする夏インターンシップが一斉に開催されたからだ。

しかし、今年の場合、昨年とは採用環境も雰囲気も大きく変わった。コロナ汚染拡大によって日本経済が深刻な打撃を受け、ほとんどの業界、企業が展望を見通すことができないままに採用人員計画未定、採用日程不透明、選考方法検討中とすべてが未定、不透明でのスタートだった。そうした最悪の環境にあるだけにこれから就活に取り組む学生にとって、22卒の就活は、先行き不透明であり、予想もつかないものとなっている。就活学生にとって今後の就活にどのような不安があるのか、当社が7月に行った現3年生(22卒予定)を対象とした「ブンナビ学生アンケート調査」(以下、本調査と略す)からこの間の学生の動きや具体的な不安、昨年との違いや今後の課題を探ってみよう。

まず、新3年生のこれまでの動きを見てみよう。

今年の3月以降、多くの大学は、コロナ防止のためにキャンパスを閉鎖し、授業をオンラインとした。そのため、どの大学でも新3年生向けの就職ガイダンスや就職イベントはオンラインで開催され、学生たちは、自宅(あるいはアパート)にいながら一人でパソコンに向かって就活をスタートすることになった。そして4月以降、7月中旬まで、新3年生は、どのような就職準備活動をしてきたのか、設問は、「これまでにあなたが行った活動」というもので定番となっている就職イベントについてそれぞれの参加状況を聞いている。主な結果を以下にあげてみよう(カッコ内は昨年同時期との増減)。

「学内のガイダンス」51.7%(▼33.7%)
「就職部・キャリアセンターに訪問・相談」18.2%(▼17.3%)
「学内の就活イベント」36.0%(▼28.9%)
「学外の就活イベント」62.9%(1.6%)
「インターンシップ参加」27.7%(▼5.1%)

当然のことながら昨年の学生とは全く違う結果となった。「学外の就活イベント」を除いてどのイベントも昨年に比べて学生たちの参加状況が軒並み低下している。顕著なのは、「学内の就職ガイダンス」の参加率が激減していることである。昨年は、8割強の学生が参加していたが、今年は5割にとどまった。これは、学内の就活イベントへの参加も同様で半減している。大学が閉鎖されたため大学主催のガイダンスや就活イベントがオンラインで開催したのだが、ひどい落ち込みだ。大学側が、プログラム内容やチャット機能、ブレイクアウト機能などを充実させて工夫してもダメだったようだ。

学生は、対面型やリアルなイベントでなければ、参加する意欲が薄いのだろうか。それとも録画はしたものの見なかったのか。とにかく、これまでのように大学でのイベントに参加することで就職登録して就活を始めるという流れが変わり、学生たちが直接、企業のホームページにアクセスして就活を始めるという動きが見え始めた。

大学のキャリアセンターへの相談件数の低下も同様で、キャンパスに入れないということで学生たちは、キャリアセンターに資料を見に来ることも相談することもできなくなった。大学側としては、対面型の相談日を設けたり、ネットで多様に対応したりしているが、利用する学生数が大きく減っている。大学によっては、個人別のオンライン相談だけでなく就活に関する質問を数百人に双方向で質疑応答するグループ相談などを用意して対応しているが参加者数は期待したほどではないようだ。

本調査で目を引くのが、こうした状況にあっても参加者が減らなかったイベントだ。「学外で開催される就活講座やイベント」がそれだ。企業や就職情報会社主催のものがほとんどだが、これは、オンラインでなく対面型が少なくない。それが参加意欲を高めたのか、採用に関連するイベントと感じ取って参加したのか、不明だが、昨年並みの参加率だったということは注目しておきたい。

インターンシップの参加状況にも触れておこう。本調査の調査時期は7月中旬なので夏インターンシップはこれからだが、ここ数年、夏前のインターンシップが増えている。今年もその多くは「1日仕事体験」(インターンシップと称する企業もある)だった。しかも今年は、コロナ対策ということでオンラインでの開催が激増している。プログラム内容、選考、運営、フォローともに対面型より負担が少ないので早期のインターンシップとして1日だけでなく数日にわたってオンラインで開催という企業が増えた。

それでもコロナ汚染の状況が読めないため中長期間のインターンシップの出足は鈍く、今年の夏インターンシップは開催件数が昨年より1割程度少なくなっているという。本調査では、こうしたなかでの参加状況だが、参加率は昨年よりやや減となった。しかし、この数字は、参加者数減と読むのは早計だろう。参加したくても開催件数が少なかったことで多くの学生が選考にあたって落とされたからだ。それは、本調査でも明らかにしているが、インターンシップにすでに参加したという学生は、昨年より少なく、「これからインターンシップに参加したい」という学生は、37.1%(昨年は、23.6%)もいて参加意欲は極めて旺盛なのである。

とくに今年は、昨年以上に企業、学生ともにインターンシップには熱い視線が注がれている。その背景には、コロナ禍にあった現4年生が、昨年の夏のインターンシップに参加していたことで就活がスムーズにいったという体験談がネット上で語られていることが大きい。そのため今年の学生たちは、昨年以上に熱心にインターンシップを軸とした就職活動に早期から取り組んでいるようだ。

このほか、この調査で見落とせない動きとして上記の表にはないが、「まだ活動はしていない」と回答した学生が7.6%(昨年は2.2%)いたことだ。数は少ないものの昨年より5%も増えている。活動していないのでなく、学生にとっては、不明だらけで活動できないのだろう。

新3年生の多くは、コロナ禍ピークの4月から6月にかけて現4年生の暗中模索の就活を見てきた。それだけにこれから始まる自分たちの就活について大いに不安になっていのも当然だろう。そうした学生たちが、これまでのプレ就活の中で感じた不安の声をいくつか紹介しよう。

・「現在、新型コロナウイルスの影響でずっと家にいる状態です。未知な就活について自分なりに調べたり対策をしたりしているものの、これが本当に合っているのか、自分は出遅れていないか、大学に相談したり、友達に会えないことが不安です」(国立大文系男子学生)
・「コロナの影響で企業が不景気となって来年の採用数が減る動きが出ています。どんな業界や企業に影響が大きいのか、その見通しはどうか、このままだと自分たちは就職氷河期再来世代となってしまうのが心配」(私立大文系男子学生)。
・「コロナ回避策としてオンラインでの就活が可能になってきたとはいえ、オンライン上で採用までを決める点において自分の能力や魅力が企業に伝わるのか、企業は、そんなことで本当に人物判定ができるのか疑問です」(国立大理工系男子学生)。
・「コロナウイルスがどれくらい影響するのかが分からず、現段階で自分がなにをすれば良いかわかりません。誰に就活の相談をすればいいか、先輩に相談するのも迷惑かなと思ってしまいます。コロナが私たちの就活にどれくらい影響するのか、就職状況が厳しくなっていることは分かっていても、それを知ったからと言ってどうすれば良いのか。分からないことが多すぎて不安です」(私立大文系女子学生)。

これまでとは全く違った学生たちの就活への不安の声が印象的だ。本調査では、この不安についての設問は、自由記述だったが、そこでのキーワードを項目別に整理すると次のようになる(多い順)。就活学生の不安5項目といってよい。

1.採用中止や採用減少への不安
2.オンライン採用への不安と不信
3.就職相談相手の不在
4.SNSの氾濫と信頼できる就職情報の入手難
5.就活のスケジュールが不透明

22卒の採用では、こうした学生たちの不安に企業が、どうこたえていくのか、それが秋からの採用活動の課題といえよう。(夏目孝吉)

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