2020.01.28メールマガジン

2020年の採用戦線を展望する

21卒の採用が始まった。今年の新卒採用では、求人ブームは継続しながらも抑制の兆しが見え始め、採用活動の早期化、通年採用の提唱、AI採用の急速な普及、一括採用の見直しなど新しい変化や課題が表面化するとみられている。

そこで、今回は昨年12月中旬までに就活前哨戦を終えた学生たちにアンケート調査*を実施、これまでの学生たちの就活と企業の動きを聞いてみた。

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*アンケート調査
当社の「21卒ブンナビ学生アンケート調査」(以下、本調査と略す)
調査時期:2019年12月1日~15日、
対象者:就職サイト「ブンナビ」の登録学生
有効回答数:467件
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▼学生の就活は、昨年より早期化し活発に
まず、学生たちが12月中旬までに行った主な就活の参加状況を見てみよう。従来、学生たちの就活の出発点といえば大学の就職ガイダンスへの参加でありキャリアセンターへの相談だが、その参加率はどうだったか。

学生の就職ガイダンスへの参加率は、昨年の87.8%から77.5%に大きく落ちた。同様にキャリアセンターの利用率も44.9%から41.0%に減っている。この低下傾向は、数年前から大学側から指摘されていたが、一段と明確になった。大学としても参加率や相談件数を増やすための工夫をしてきたのだが、この結果だ。ここ数年の売り手市場という環境を反映しているだけでなく、企業の採用活動の早期化や通年化、採用チャネルの多様化を反映しているのだろう。

この動きは、就活イベントや企業セミナーへの参加率の減にもなっている。これらの理由は、学生が就活に熱心でないことではない。むしろ熱心だからこそ多様な就職サイトに登録して、自分から多くの情報を集めながら効率的な就活を行っているからだろう。

早期の就活の中で注目されたのは、「企業からの連絡で社員と会う」という学生の就活だ。これは本当は企業側の採用活動といえるが、その動きは活発で、昨年の10.6%から倍増の21.9%となった。今年は多くの企業が就職情報解禁前の活動としては大胆でアグレッシブな活動を行っていることがわかる。

学生の就活では「本選考のES、書類提出」をした学生が23.8%もあるという数字にも驚く。これも当然ながら企業側が学生に要求している就活である。昨年までは、ES、書類提出は、就職情報解禁の3月1日以降というルールがあったが、どうやら消滅したようだ。

▼インターンシップがさらに発展
早期における学生の就活ということでは、いまやインターンシップがその中心。本来、採用活動とは関係のない夏季の就業体験に過ぎなかったインターンシップが、早期採用の有力なツールに変質してから学生のインターンシップ参加率は急速に高まり、プログラム内容も充実してきた。だが、その発展は年々採用との関連を深めてきたことも事実。

この実情については学生も十分に承知していて、本調査では学生の7割が「選考につながっている」ことを期待し、実際に参加した学生も「選考に直結していた」24.4%、「何かしら関連している」46.4%と回答していた。

そうした理解が学生の間に浸透してきたためだろうか、昨年末までのインターンシップ参加率は80.5%に達している。この数字は昨年より大幅増だが、今後も冬、春インターンシップなどが多く予定されているので参加率はさらに上がり、最終的には、就活学生の9割近くがインターンシップ経験ありということになるだろう(昨年の最終結果は約7割)。

採用との関連はともかく、学生たちは、どのような目的でインターンシップに参加しているのか。多い順にあげると企業理解、社風を知る、業界理解、選考に有利、就業体験。これがベスト5。インターンシップは就業体験でなく会社説明会だという理解が一般的になったらしい。

興味深いのは、二番目に社風を知ることが目的という回答があったこと。社風とはあいまいでホームページや入社案内だけではわからない。そのため学生たちは、インターンシップのように実際に職場に入って社員たちと仕事をしたり議論したりすることで社風を理解できると思っているようだ。数年前から社員たちが社風を語るクチコミサイトが就活学生の関心を集めるようになったのも社風への関心が高いからなのだろう。

▼採用活動のテンポが速く、内定率は3.4%
このように昨年末までの学生の動きをみると、企業の採用活動は昨年以上にテンポが速く、早期選考の動きが少なくない。インターンシップ参加者に対するフォローや囲い込み、エントリーシートの提出だけでなく、すでに採用面接を受けたという学生が19.7%に達している。こうなれば内定を示唆する企業が出てくるのは当然だろう。

本調査では、12月中旬までに「内定取得した」と回答した学生が3.4%もいた(昨年は、1月中旬で1.4%)。ここで興味深いのは内定を出してもらいながらも承諾した学生が、わずか0.4%だったことだ。いくら早期内定を出しても喜んで内定を受諾して就活をやめる学生が少ないことに企業は留意してほしい。

▼志望業界、人気業界に変化
人材ブームが続き、売り手市場ということで学生たちの企業選択の対象は広いものとなっているが、企業規模へのこだわり、将来性あると思われる企業、就職したい企業はどんなところか、これも企業にとって学生の就活の変化として知っておきたいところだ。

企業規模についてのこだわりはどうか。「大手企業しか考えない」という回答は7.3%、「出来れば大手」が48.9%で6割近くが大手志向。これは昨年並みだが興味深いのは「規模にこだわらない」という回答が4割もいたことだ。企業規模より仕事本位に考えているのか、これをどう理解するかが採用担当者の課題だろう。

また、インターンシップを経験したとはいえ3年生の12月段階で学生は、どれくらい志望企業を決めているのだろうか。回答は49.6%の学生が社名も挙げられると回答している。就活3か月前に志望企業が明快であるなら大学側は、アドバイスしやすいことになるが、採用担当者とすれば残り50.4%の学生は、「絞り込めていない」のだからまだまだ採用PRやセミナーでアピールする余地があるということになる。

では、21卒学生たちは、どのような業界を志望しているのか、人気の高い順にあげると、1:メーカー(生活関連・食品・住宅)、2:商社、3:マスコミ、4:通信・情報、5:インフラとなる。銀行、証券・保険という金融関連は、もはやベストテンにも入っていない。金融志望者がどこに転身するかが今年の採用活動の焦点になりそうだ。

▼採用スケジュールは前倒しの気配
最後に21卒の学生たちは、今年の就活をどのように展開するのか。本調査の結果から予想されるのは次のような動きである。

1.学生は、志望企業を1月末までには決めたいと思っている。
2.就活のピークは3月になるとみている。
3.エントリーする社数は20社以下と厳選している。
4.就活が終了するのは6月と予想している。

これが学生たちがイメージする21就活の展開だが、企業はどうだろうか。3月1日説明会解禁、6月1日選考開始というルールは、政府が指針を継承して従来通りとなったものの、これまでのインターンシップや各種就職イベントの実態からいえば、すでに形骸化している。

だからといって採用内定を極端に早める気配もない。たしかに優秀人材の採用は、通年採用の枠などで早期採用に踏み切るだろうが一部分だろう。多くは、従来通りの採用ルールに準じることになりそうだ。従来の一括採用からの転換はそれほど簡単でないからだ。

それでもオリンピック開催を夏に控えているだけに、昨年以上の採用活動の前倒しは必至で、3月中旬過ぎには早期内定を出す企業が相当数出るとみられる。そうなると採用選考のピークは4月となり、5月連休前に採用活動は決着する。後がないだけに今年の採用活動は、3月・4月に集中することが予想される。大混乱である。

そのため大学の就職担当者や企業の採用担当者としては、2月のインターンシップや3月の採用イベントの動きを注視しながら4月からは、臨機応変に対応していくことが課題になるだろう。(夏目孝吉)

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