2019.07.09メールマガジン

20卒採用の概要

■20卒の採用活動は、昨年秋、経団連から「指針撤廃」発言が飛び出るなど波乱の幕開けだったが、採用環境、採用活動、内定のテンポなどは前年並みで6月末には多くの企業が採用活動を終了した。当社の学生モニター調査でも登録学生の75%がすでに内定を保有している。こうした20卒採用の詳細については、現在、調査を集計中なので次回にして、今回は中間総括ということで20卒の採用の概要は、どうだったのかを振り返ってみよう。

1.採用計画は旺盛だが高止まり

まず、企業の採用意欲だが、これは、日本経済が引き続き好調ということで求人ブームは継続した。日経新聞の採用調査では、昨年度比7.9%増(昨年は8.5%増)、リクルートワークス研究所の求人倍率調査も1.83倍’(昨年は1.88倍)と伸び率が鈍化している。どうやら企業の求人ニーズは、高止まりしているようだ。業種別に見ると陸運、建設、サービス、小売りの採用意欲は旺盛で自動車、保険が抑制だった。銀行業界の採用抑制が話題になったが、これは、業務の統合やAI化が進むメガバンクの話。銀行全体では前年並みの採用計画だった。大量採用企業ということでは製造業派遣、技術者派遣、調剤薬局などが上位を占めるようになったのもここ数年の傾向だ。

2.採用活動はインターンシップが軸に

採用活動のスケジュールはどうだったか。ここ数年、プレ広報活動としての夏インターンシップが企業や学生にとって活動開始のイベントとなっている。その目的も就業体験型のプログラムから会社を知ってもらうことに変化、そのため企業は、夏から1dayインターンシップを実施する企業が急増した。こうした夏インターンシップには、就活生の7割が参加経験ありと回答、定着した。インターンシップ参加学生は、その後、秋、冬のインターンシップに招待され、企業の選考のフローに乗せられ、内定を獲得した学生も少なくなかった。インターンシップのプログラムについても秋以降は、グループワークが目立って多くなり、選考会の役割も担っていたようだ。
3.内々定はやや早かった

かつてない求人ブームと指針撤廃へ、という背景の中で展開された20卒採用だが、早期内定が増えると予想されていたが危惧したほどではなかった。3月上旬の内定率が8%、4月上旬で25%、5月上旬で59%というのは昨年よりやや早いペースだったが、一部の企業にとどまり、全体への影響はなかった。多くの企業は6月上旬に内定出しを予定し、学生の内定率は75%に達した。これは昨年と同じ水準。多くの企業が早期から学生と接触をしていても内定時期は、6月上旬の人事面接を経てから出すという動きをしたからだろう。最後の指針は、なんとか体面を保てたようだ。

4.人気企業は、身近なブランド企業

20卒学生が就職したいと思う企業は、どこか。恒例の当社の就職ブランドランキングの結果は、全日空、明治グループ、日本航空がトップ3。以下生保、証券、総合商社、メガバンクと続いた。いずれも身近なブランド企業が上位を占めていた。かつて上位にあった経団連銘柄といわれる製造業は後退したまま。IT社会を担う情報通信の大手企業も50位前後に甘んじた。人気後退が顕著なのは、採用抑制のメガバンク。人気は、業界別でなく個々の企業に分散。旅行関連、総合印刷、広告代理店、映像、出版、IT情報などコンテンツを豊富に持つ企業が学生の人気を集めている。これからの時代を見据えているのだろうか。

5.学生の就活と職業観

学生たちの就職への取り組みは早くなっている。大学3年生になってすぐに就職ガイダンスがあるし、就職対策講座もスタートする。6月になれば夏インターンシップの案内が始まる。年末まで学生たちはどの程度の就活をしていたのか、当社の学生モニター調査によれば、学外での就活イベントには7割、インターンシップは7割、OB/OG訪問は1割、企業エントリー5割という。いずれも昨年より増えている。この傾向がそのまま企業の応募数に反映されるかといえばそうではない。関心を持つ企業に接触するというプレエントリー数は3年前に比べると半減、逆に会社説明会への参加は微増、エントリーシート提出も微増と学生は、志望先を絞り込んで就活している。つまり学生の就活は、大手企業や人気企業に集中、中堅企業や地味な企業に学生は関心を示さなかったのである。学生が売り手市場を意識している反映だろう。

6.AI採用時代が到来

公平で丁寧な採用だけでなく、業務の軽減と選考のスピードアップという課題を解決するものとして、昨年からAI採用が注目されていた。オンラインでの会社説明会や質問会、エントリーシートの採点、面接や能力・性格テストも普及し始めた。とくに昨年から急増したのがスマホを使った動画選考。これは大手の食品会社や総合商社、保険会社などがインターンシップ選考のエントリーで導入、さらに地方のスーパーや信金もUターン学生をターゲットにするという目的で一次面接に導入、話題となった。だが、今年は、導入した企業の多くは、トライアルの段階だった。AI採用への疑問や課題は多いが、大きな関心を集めることとなった。

7.指針時代の終焉

新卒採用について今年は大きな転換期となった。採用活動のルールを決めた経団連の指針が撤廃され、一括採用の見直しが経団連から提起されたからである。そのため20卒採用は指針最後の年ということで活動の早期化、、混乱を予想する向きもあったが、実際には、「やや早期化」した程度で混乱もなかった。撤廃は21卒からということで当面する採用活動では、従来通りの一括採用を継続した企業がほとんどだった。経団連の示す通年採用への移行もすでに3割近くの企業は取り組んでいるので目新しい提言でもなかった。今後は、通年採用中心になるのかどうかが焦点だが、本年に関しては、まだ一部の企業にとどまり、課題は先送りされたといってよい。

▼このように20卒採用は、引き続き求人ブームの中で展開され、指針廃止という大きな動きがあったものの大きな混乱はなく、採用活動はインターンシップが軸となって進められ選考のツールとしてAI採用が登場、前年同様、6月末に採用活動は終息した。そして、いよいよ指針なき環境の中で21卒の採用活動が始動することになった(夏目)。

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