2019.06.11メールマガジン

ホームページの充実も内定者対策になる

▼当社の学生モニター調査によれば、すでに学生の内定保有率は6割に達している(調査対象時期:5月1日~20日)。すると就活中の学生は、4割程度ということになるが、実際は違う。内定を持ちながらも就活をやめない学生が多いのである。その回答は「現在の内定先に不満はないが就活を続ける」というもので、これが27.8%、「現在の内定先は不満なので就活を続ける」が14.1%もある。だから「就活は終了した」と明言する学生は、17.0%にすぎない。そうしてみると、まだ8割の学生が、就職サイトに登録したままであり、関心を持った企業があれば、エントリーしたり採用面接に参加したりしているのである。調査時期から1か月が過ぎた現在では、大手企業の多くが内定を出したので「就活を継続」している学生はかなり減ったが、内定を保留しながら就活をしている学生は、少なくない。これでは企業の採用担当者は、気を抜けない。就職先を最終決断する情報や相談相手は誰なのか、誓約書を書かせるぐらいでは安心できないだろう。

▼多くの学生が、いつまでも就活を継続する理由は、3つある。第一は、早期内定の結果である。就職情報が解禁され、面接がスタート、内定するまでの期間が短いからだ。企業としては優秀人材ほど早期に内定を示唆する。だから学生は、じっくり企業研究や先輩社員の声を聞く時間がなく、他社との比較ができないまま内定を受諾することになる。第二は、学生の職業観。就職先の企業について強いこだわりがない。どうしてもこの会社に就職したいという志望動機が希薄なのだ。だから学生は、航空、銀行、電機メーカーとの併願になんら違和感もなく、どこの企業のESでも上手に書き、面接を突破、内定する。企業側は、第一志望かどうかにこだわるが、学生は、志望順位にこだわりがない。むしろ学生は複数内定してから本格的に企業研究をして志望度を高めている。第三は、大手企業の採用活動の通年化である。形骸化したとはいえ大手企業の内定は6月1日以降が多く、その結果、学生は、早期に内定企業を確保したうえで大手人気企業の6月最終選考に臨む。そして紛らわしいのが、これら企業の6月採用、夏採用という通年採用情報。学生に期待を持たせてしまうのである。通年採用の多くは、若干名であり、内訳は、帰国留学生、グローバル人材、理工系二次募集などだ。それを理解していないと「現在の内定先に不満はないが就活を続ける」という内定者にとっては、チャンス到来と大いに期待するのである。

▼こうした内定を持ちながら就活を継続する学生たちが、内定留保から就職先として最終決断するのは、どんな情報を参考にしているのだろうか。前述の学生モニター調査では「就活を終了した」学生にこれを聞いている。多い順にあげてみよう(複数選択)。
1.企業ホームページ、78.8%
2.社員・OB/OG情報、67.3%
3.企業業績・売上・利益など財務情報、59.6%
4.転職サイトのクチコミ情報、53.8%
5.離職率・残業時間など労働条件情報、46.2%
6.友人・知人・先輩のアドバイス、40.4%
7.ネットで見つけた情報、38.5%
8.2チャンネル、15.4%

▼注目してほしいのは、企業のホームページの役割である。内定した後でも学生は、しっかり企業のホームページを見ている。そして社員やOB/OGの話もよく聞いているようだ。気になるのは、転職サイトのクチコミ情報やネットで見つけた情報、2チャンネルの存在である。これは、企業サイドの情報でなく、社員や元社員、関係者による投稿サイトである。2チャンネルなどは、匿名を良いことに企業や人物の悪口や噂を面白おかしく垂れ流しているが、転職サイトは、至極、真面目な書き込みが多く、学生にとって参考になると思われている。しかし、真面目といっても会社に満足している社員は、こうした転職サイトに登録したり、投稿したりすることはない。不満や批判の意見を持つ社員あるいは元社員の匿名情報であるだけに企業にとっては、要警戒だ。だが、こうした転職あるいは会社クチコミサイトの情報は、学生たちにとっては、知りたい情報であることには違いない。例えば、「入社理由と入社後のギャップ」「風通しのよさ」「社員の士気」「平均年収」「20歳代の成長環境」有休休暇消化率」「待遇面での満足率」など。企業のホームページでは見かけない情報だ。しかし、内定した学生が就職先を決断するために密かに知りたいのは、こうした情報である。そのため信頼度がなくても読みたいのである。

▼そこで内定者対策である。多くの企業は6月中旬から内定者フォローを本格化させるが、内定者の悩み、不安は、各人各様。そのために若手社員をメンターにつけたり、各種懇親会を頻繁に開催したりするのだが、内定者の主な情報源が、企業のホームページとすれば、これを内定者向けに充実させるのも方法である。これまでホームページは入社を呼び掛けるガイダンス的なものだったが、これからは、入社後の若手社員の姿を見せることが課題である。そのためには、前述の会社クチコミサイトにあるような企業の現状や実態、社員の生の声をふんだんに盛り込まなくてはならない。今後、企業は、内定者対策として既存のホームページを会社クチコミサイトに負けないぐらい質の高い情報を具体的に、率直に紹介してみてはどうだろうか。なお、内定者が企業に聞きにくく、企業も公開したくない入社後の待遇、配属先、勤務形態、人事評価制度などは、最近、発達著しいAIを活用して個人ごとに深くインタラクテイブに無機的に質疑応答するのも有効だろう(目)。

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