2026.04.28メールマガジン

若者は変わったのか、時代が変わったのか

今年も多くの若者が、新社会人としてのキャリアをスタートさせました。テレビのインタビューで受け答えする彼らを見ていると、30年以上前に同じ立場だった自分とは、異なる時代を生きているように感じたりします。

一方で、緊張や不安を抱えながら新しい環境に向かう姿には、変わらないものがあるようにも思えます。そんな感覚を、数字で示している興味深い調査データがあります。

博報堂生活総合研究所のホームページで公開されている『若者30年変化』(※)は、1994年当時に19~22歳だった若者と、2024年に19~22歳だった若者を比較し、その変化をまとめたものです。私が着目したデータを、いくつか紹介します。

▼異性より同性を優先する関係性
まずは、同性と異性の関係の変化です。
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<自分にとって居心地のいい組みあわせ>

【1994年/2024年】
25.5% 64.8% 同性同士の二人
38.1% 14.7% 異性との二人
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「自分にとって居心地のいい組みあわせ」として、1994年では「同性同士の二人」より「異性との二人」の方が高かったのですが、2024年になると「同性同士の二人」が大きく伸び、「異性との二人」は低下しました。

同じ傾向は「落ち込んだときに一番そばにいてほしい相手」という設問にも表れています。
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<落ち込んだときに一番そばにいてほしい相手>

【1994年/2024年】
36.0% 55.6% 同性の一番の友達
55.9% 16.0% 異性の一番の友達
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「同性の一番の友達」は、1994年から2024年にかけて約20ポイント増加し、「異性の一番の友達」では約40ポイントも減少しています。

この30年で同性同士は、より親しい関係を築くようになった一方で、異性との関係はやや遠いものになったようです。異性よりも同性との関係に、心地よさや安心感を抱く若者が増えたのでしょう。

▼ 幼なじみとの関係が長期化
では「同性で一番親しい友達と知り合った時期」はいつなのでしょうか。
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<同性で一番親しい友達と知り合った時期>

【1994年/2024年】
19.6% 34.5% 小学校以前
57.6% 54.7% 中学・高校時代
18.2%  9.3% 大学時代以降
4.6%  1.5% 友達はいない・不明
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「小学校以前」(「小学校入学前」と「小学校時代」の合計)という回答は、1994年から2024年にかけて、15ポイント近く上昇しています。そして「大学時代以降」(「短大・大学時代」と「社会人になって」の合計)は、18.2%から9.3%へと半減しました。幼いときからの友人であれば、お互いの未熟な時期を知っており、見栄やプライドが入り込みにくい関係を築けます。

その反面、大人になってからは、自身の価値観や立場がある程度できあがるうえ、ハラスメントなどへの配慮も求められるようになります。お互いに慎重な交流になり、深い友人関係を築くことが難しくなっているのでしょう。

こうした人間関係を、『若者30年変化』では「ローリスク仲間」と名付けています。なるほどと納得する一方で、これを「Z世代らしさ」とすることには少し違和感があります。大人同士の交流に慎重になる傾向は私自身にもあり、特定の世代における特徴というより、今という時代を反映した価値観のように感じたのです。

▼世代を超えて広がる価値観
別の設問を見てみましょう。
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<相手と意見が違っていても、反論はしない方だ>
49.2%【1994年(19~22歳)】
64.8%【2024年(19~22歳)】
63.0%【2024年(49~52歳)】

<自分の考えと合わない人と一緒にいることは避けている>
57.2%【1994年(19~22歳)】
71.0%【2024年(19~22歳)】
74.0%【2024年(49~52歳)】
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「相手と意見が違っていても、反論はしない方だ」は、1994年の19~22歳で49.2%だったのに対し、2024年では64.8%に上昇しています。また「自分の考えと合わない人と一緒にいることは避けている」も、57.2%から71.0%へと増加しました。意見や価値観が異なる相手とぶつからず、距離を取る傾向が強まっているわけです。

続けて見てほしいのは、1994年当時に19~22歳だった人たち、つまり2024年時点で49~52歳になっているアラフィフ世代の傾向です。同じように「相手と意見が違っていても、反論はしない方だ」「自分の考えと合わない人と一緒にいることは避けている」が、同程度、あるいはそれ以上に増加しています。

異質な他者との関わりを避ける傾向は、世代を超えて広がっていると見るべきでしょう。

「責任ある地位よりも気楽な地位にいる方がいい」の増加、「仕事は責任が重くても、すべてまかされる方がいいと思う」の減少も同様です。人間関係だけでなく、仕事においても責任ある立場を避け、リスクや負荷の少ない立場を望む傾向は、世代に関係なく強まっています。
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<責任ある地位よりも気楽な地位にいる方がいい>
58.6%【1994年(19~22歳)】
73.2%【2024年(19~22歳)】
77.5%【2024年(49~52歳)】

<仕事は責任が重くても、すべてまかされる方がいいと思う>
50.3%【1994年(19~22歳)】
25.7%【2024年(19~22歳)】
33.0%【2024年(49~52歳)】
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▼メンパを重視する時代
最近は、コスパ、タイパに続いて、メンパという言葉も耳にするようになりました。メンパとはメンタルパフォーマンスの略で、心の負担を減らし、安心して過ごせる状態を重視する考え方です。

今回の調査データを見る限り、世代を問わず、メンパを重視し、心理的ストレスや不安を避ける志向が強まっていると感じます。今という“時代の価値観”の1つなのでしょう。

Z世代とされる新社会人の評価として、失敗を怖がる、言われたことしかやらない、新しいことに慎重――といった見方をされることがあります。しかし、こうした評価は、特定の世代を表すものではなく、社会全体に広がる空気を反映しているように感じます。

若者は時代を映す鏡でもあります。Z世代は理解しにくい他者ではなく、自分の中にも存在する価値観を分かりやすく体現した存在。そう考えると、彼らとの関わり方、育成や支援のあり方が見えてくるのではないでしょうか。
〔就職情報研究所 所長 平野 恵子〕


博報堂生活総合研究所「若者調査」(1994年調査/2024年調査)
https://seikatsusoken.jp/youth30/

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