2026.08.04メールマガジン

ソフトスキルよりハードスキルを求める学生

先日、大学1年生を対象に「就職(もしくは就職活動)について、知りたいことを教えてください」という任意の自由記述アンケートを実施しました。集まったコメントを生成AIで定性分析したところ、もっとも多かったのは、就職活動への取り組み方を求める声でした。

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「就職活動って、いつからどんなことをするのか」
「いまからできる準備はあるのか」
「インターンシップには、早めに参加したほうがよいのか」
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実際の就職活動はまだ2年も先なのに、具体的な就活準備について知りたがる学生が少なからずいることが分かります。

▼進路選択の“支援サービス”を経験してきた学生
考えてみれば、大学受験という進路選択では、様々な支援サービスを経験しています。

自分の学力レベルや通学条件に合った大学を提示してもらい、学校推薦型選抜・総合型選抜・一般選抜(学力試験)など、自分に向いている受験方法もアドバイスしてもらえます。一般入試(学力試験)であっても、得意科目に応じた最適な受験方法を提案してくれます。自分にとってベストな進路選択ができる環境が整っていたわけです。

さらに付け加えれば、こうした支援サービスは高校受験のときから始まっています。大学受験における総合型や学校推薦型で有利になりそうなプログラム、例えば「産学連携の探究教育が受けられる」「ビジネスアイデアコンテストへの出場経験ができる」といった取り組みを紹介し、年内入試の支援をPRする高校も少なくありません。

これだけ手厚いサービスを受けているわけです。大学で「○○業界向けのガクチカ(「学生時代に力を入れたこと」の略)に使えるプログラム」などの支援サービスがないことに不安を覚える学生がいても、不思議ではありません。

受験と比べて、就職活動のプロセスはひどく曖昧です。全ての「選考日程」が事前にアナウンスされることはありませんし、採用活動そのものが複線化しているので、選考プロセスも人により異なります。決められた手順で進めていけば、一定の結果にたどり着けるわけではないので、学生が不安を感じるのは当然と言えるでしょう。

▼ハードスキルを求める学生心理
こうした不安は、可視化できる実績集めへと学生を向かわせます。履歴書やエントリーシートに書ける資格取得や専門スキルの習得は、その代表例と言えます。ポテンシャルを重視する新卒採用において、資格や専門スキルが直接評価につながるケースは限られます。

しかし、正解が分からない不安のなかで、実績になる取り組みを「やっている感」が安心につながるのでしょう。

こうした学生動向を感じさせるデータがあります。パーソル総合研究所の『新卒就活の変化に関する定量調査』(※)では、企業の採用担当者に学生の変化を尋ねています。
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<企業が感じる学生の変化/2020年・2025年比較>

●5年前と比べて上がったと感じる項目(上位3つ)
-リモートワークのスキル・知識
-デジタルスキル・知識
-データリテラシー・データ分析

●5年前と比べて下がったと感じる項目(上位3つ)
-リーダーシップ経験の多さ
-積極的な態度
-起業家精神
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上がったと感じる項目では、スキル・知識といったハードスキルが上位を占めています。これらは履歴書やエントリーシートの資格欄に記載しやすく、勉強すれば獲得できる確実性があります。費やした労力に見合うリターンが約束されている取り組みには、熱心に取り組む学生が多いようです。

一方、下がったと感じる項目には、いわゆるソフトスキル(個人の特性、姿勢や態度など)に該当するものが並んでいます。これらは資格欄に書ける内容ではないし、獲得プロセスも曖昧です。ソフトスキルよりハードスキルを重視する気持ちは理解できます。

▼生成AI時代に問われるソフトスキル
生成AIの台頭によって、「人でなければできない仕事」への価値は、今後ますます高まっていくと考えられます。そうなれば、ソフトスキルの価値は高まり、鍛えるためのプロセスはガクチカとして評価されやすくなるでしょう。

学生の多くは、ハードスキルのように明示できる成果のある経験でないとガクチカにならないと考えがちです。しかし多くの企業は、どんな努力や工夫をしたのかというプロセスを通して、ソフトスキルを見定めようとしています。学生と企業の評価に対する考え方には、少なからずギャップがあるようです。

夏休みが始まり、インターンシップやオープン・カンパニーなど、学生が社会人と接する機会が増えていきます。新卒人材をどんな視点で評価し、選考で何を知ろうとしているのかを体験的に理解することができれば、今後の大学生活に変化をもたらすことができるでしょう。

キャリア形成支援プログラムで得た気づきが、学生の成長につながるまでには時間を要します。学生は焦ることなく、自身のキャリア形成と向き合ってほしいと考えます。そして企業も、選考を急くことなく、学生の成長していく時間を見守る姿勢が必要ではないでしょうか。
〔就職情報研究所 所長 平野 恵子〕


パーソル総合研究所『新卒就活の変化に関する定量調査』(P30)
https://rc.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/thinktank/data/job-hunting.pdf

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