2025.04.28メールマガジン

学生の5割がメンタルヘルスに不安

【学生の5割がメンタルヘルスに不安】
就活生の悩みと大学・企業ができる支援とは

2026年卒の学生を対象に弊社が2025年3月下旬に実施したアンケートによると、就職活動におけるメンタルヘルス面の不安を「ある」「ややある」と感じている学生は全体の51.6%にのぼりました。選考へのプレッシャーや将来への漠然とした不安など、学生が抱えるストレスは多岐にわたります。

本稿ではその実態と背景、そして大学・企業ができる支援の方向性について考察します。

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■TOPICS
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1.メンタル不調の実態と背景
2.背景にある社会・就活環境の変化
3.就活ストレスの多様化と「構造的プレッシャー」
4.面接官・就職課に求められる「安心設計」の視点
5.「体験の質」が支援力のブランドに
6.最後に:不安に沈む学生を一人でも減らすために

1.メンタル不調の実態と背景
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前述のとおり、2026年卒学生のうち「就職活動でメンタルヘルスに関する悩みを抱えたことがある」と回答した学生は、「ある」20.0%+「ややある」31.6%で、合計51.6%にのぼりました。以下は、悩みの具体的な原因として挙げられた項目です。

●原因として思い当たることはありますか(複数選択)
75.5%:面接や試験などの選考を受けることへのプレッシャー
61.2%:(将来に対する)漠然とした不安
55.1%:選考の結果が思うようにいかないことへの不安
46.9%:他者との比較(周囲の友人・SNSやネット上の情報・成功事例)
38.8%:睡眠不足や体調不良による精神的負担
36.7%:スケジュール調整の難しさ(説明会や面接の日程調整)
32.7%:学業やアルバイトとの両立が難しいことによるストレス
26.5%:面接官や採用担当者とのやり取りによるストレス
22.4%:周囲(家族・友人・学校)の期待や心配によるプレッシャー
6.1%:採用担当者からのハラスメント
6.1%:家族や友人と話す機会が減ることによる孤独感

上記からもわかるように、就職活動に伴う不安は選考の過程だけでなく、生活全般に関わるストレスや社会的要因とも深く関係しています。

2.背景にある社会・就活環境の変化
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今回のアンケート結果の背景には、以下のような複合的な要因があると考えられます。

[1] コロナ禍による大学生活の制限
2026年卒の学生は2022年4月に大学へ入学しており、当時は感染状況が落ち着きつつあるタイミングでしたが、一部の大学では制限的な運営が続いていました。ガイダンスや初年度講義をオンラインで実施したケースもあり、キャンパスライフの立ち上がりで人間関係を築く機会を逃した学生も少なくありません。情報共有の不足が孤独感を強め、就職活動の不安増加に影響しやすい背景があったといえるでしょう。

[2] インターンシップ早期化・複雑化による準備の難しさ
「基準を満たしたインターンシップ」に代表されるように、就業体験が本選考と密接に関わるようになり、学生は3年次の春からエントリーや準備を迫られるようになりました。オープンカンパニー、キャリア教育プログラム、早期選考型のインターンなど、形式の違いが多く、「何が本選考につながるのか分からない」という声も聞かれます。この“就活の複雑化”が、初めての就職活動を迎える学生にとって無視できない精神的負担となっています。

[3] SNSの普及による“他者比較”の増大
SNSでの「内定報告」や「就活実況」が当たり前になりつつある今、他人と比較して焦る感情を抱く学生が増えています。ESの通過率や内定数が投稿される場面も多く、数字での比較により自己肯定感を下げるケースも目立ちます。アンケートでも46.9%が「他者との比較」がメンタル負担の原因と回答。他にも、選考以前の段階から将来不安に直面している学生も少なくありません。

3.就活ストレスの多様化と「構造的プレッシャー」
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自由記述からは、就活をめぐる学生のリアルな声が見えてきます。
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「誰しもが常に誰かと比較してしまいやすくなったために、周りの成功体験や嘘の情報に過度に踊らされ、漠然とした不安を抱える」
(群馬大学大学院・理系・男性)
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「SNSで同学年の就活生が大手に内定した情報を見て不安になる」(国士舘大学・文系・女性)
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「ブラック企業に入社したらどうしよう。内定が1つももらえなかったらどうなるのか」(日本大学・文系・男性)
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これらの声に共通するのは、「就活プロセスそのもの」だけでなく、「比較される構造」や「将来への不確実性」への不安です。Z世代の就活では、心理的安全性の確保がより一層求められており、企業や大学の接し方・支援のあり方が学生の心に大きな影響を与える時代になっています。

4.面接官・就職課に求められる「安心設計」の視点
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不安を感じる学生が多数派である現状を受け、企業・大学に求められるアプローチは以下のとおりです。
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<企業側>
【心理的安全性の確保】
質問意図の共有、リラックスした雰囲気づくり、フィードバック提供が安心感や志望度向上につながります。

【選考プロセスの“見える化”】
評価軸やスケジュールを可能な範囲で提示することで、曖昧さからくる不安を和らげることができます。

【接点機会の拡充】
社員座談会やカジュアル面談など、選考前・中・後に企業の“さまざまな顔”を見せることで、不安解消・働くイメージ(職場イメージ)の強化にもつながります。
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<大学側>
【比較からの解放支援】
成功事例や「内定者の声」といった「正解の就活」だけではなく、「多様な進路」を伝えることで、学生の自己評価の幅を広げられます。

【メンタル不調の予兆検知】
キャリア相談と連携したメンタルサポートや、匿名アンケートの定期実施等で、早期発見・早期対応につながります。

【孤立を防ぐ「コミュニティ型支援」】
学生同士が情報交換できる「就活カフェ」や、OB・OG訪問会など小規模イベントの提供も有効です。
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5.「体験の質」が支援力のブランドに
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SNSを通じて学生の就活体験が共有される今、企業や大学に対する評価は「何を言ったか」ではなく「どう関わったか」によって定まる傾向があります。学生が「安心して話せた」「気持ちに寄り添ってくれた」と感じる体験こそが、採用ブランドやキャリア支援力として認識され、次年度以降の応募者動向やリクルーターの形成にも影響を与えるでしょう。

6.最後に:不安に沈む学生を一人でも減らすために
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選考の合否だけでなく、「その途中でどんな感情を持ったか」が、学生の心に深く残ります。企業の採用担当者や大学の就職課職員の皆さまには、学生が安心して一歩を踏み出せるような関係性と仕組みづくりを期待しています。選考のプレッシャーに押し潰されそうになりながらも、「将来を自分の意志で選びたい」と考える学生に対して、「不安を抱えていても大丈夫」と伝えられる関わり方が求められていると考えます。

今後も、学生の声を起点にした採用活動・就職支援を、私たちと一緒に考えてまいりましょう。
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いかがでしたでしょうか。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。

〔ブンナビ編集長 間宮 康之〕

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