2025.10.28メールマガジン
企業接触数は高水準でも、今後の志望企業は“増やさない派”が拡大中/4か年比較で見る、就活行動の変化と学生心理 /「広く→深く」への移行期に必要な支援とは
【4か年比較で見えた就活行動の変化】
“量から質”へ、意思決定の最適化が進む
弊社の学生アンケート(24-27卒・各9月時点)をもとに、就活初期段階の「企業接触数」「志望企業数」「志望拡大意向」を4か年で比較しました。データからは、情報接触の量を維持しつつ、意思決定の質を高めようとする学生の姿勢が鮮明に見えてきます。
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■TOPICS
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1.4か年サマリー:3つの変化
2.接触企業数の推移:量から質へ
3.志望企業数は安定:意思決定は前倒し
4.志望企業「増やさない」増加の背景と学生心理
5.企業・大学が取るべき対応と支援策
1.4か年サマリー:3つの変化
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【変化1】接触は“高止まり→最適化”
平均接触企業数は24卒21.4社→26卒25.3社(ピーク)→27卒22.2社。中央値は24卒・27卒が「11-15社」と再び上昇。「入口は広く、その後すばやく絞る」といった行動が定着している傾向が見受けられます。
【変化2】志望企業数は安定
平均6.5-7.0社、中央値「2-5社」で推移。幅は据え置きつつ、比較と吟味の深さで勝負する傾向が強まっています。
【変化3】今後の志望企業「増やしたくない」が拡大
「志望企業をさらに増やしたい」は81.3%(24卒)→71.7%(27卒)。「増やしたくない」は18.7%→28.3%へ。10pt変化。学生の志向は“量的拡張”から“質的選択”へシフトしていると考えられます。
2.接触企業数の推移:量から質へ
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接触企業数の分布で見ると、27卒は「21-40社層」が拡大し、「0社」「1-2社層」は減少しました。一方で「41社以上」の超多接触層は減少しており、効率志向+実践重視が顕著です。
秋以降の採用現場では「既に多く接触済みの学生に、どう印象を残すか」が鍵となります。短時間で印象に残るような、“密度の高い体験設計”が求められます。
3.志望企業数は安定:意思決定は前倒し
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志望企業数は平均6.5-7.0社で横ばい。「どの比較軸で納得するか」が選考行動を左右する時代です。
企業の“体験差”(配属・社風・成長実感など)を、短時間で可視化できる設計が望ましいと考えられます。「説明時間の長さ」よりも、その説明の先にある「納得の深さ」が、志望度・意思決定率を左右する要因となりえます。
4.「増やさない」増加の背景と学生心理
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接触数が変わらない24卒と27卒でも、現状の捉え方やその後の方針には差があります。
24卒コメント:「不安だから分母拡大」「保険として数を増やしたい」。
27卒コメント:「夏で業界を絞った」「情報を追えない」「質を保ちたい」。
27卒では、認知コストと時間の最適化を意識する学生が増加し、「闇雲に増やす」よりも、「集中して準備する」ことを合理的に選択しています。これらの指標からも、単なる接触拡大の施策では動かず、“比較材料の質”の提示が必要であることが分かります。
5.企業・大学が取るべき対応と支援策
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【企業編】
●比較軸を言語化
配属・勤務地・初任給・裁量・OJTの仕組み・職種横断の機会などを、他社と分かりやすく比較できる状態で開示することで、意思決定の材料を提供することにつながります。透明性の高い情報発信は、信頼や納得感の形成にもつながります。
●短時間・高密度の説明
30-45分の“テーマ座談会”や“ショート職場見学”で、現場の温度を伝えることで、短時間でも腹落ちしやすい体験を提供できます。
●志望度に合わせた導線設計
情報収集層には「仕事の理解」を促進するコンテンツの提示、意思決定層には「納得型の面談(相手の課題に合わせた情報提供)」が効果的と言えるでしょう。
【大学編】
●「広げる支援」から「絞る支援」へ
学生が、“自分なりの判断軸”を持てるように促す支援も有効でしょう。企業比較ワークシートや判断基準表などを作成・活用し、面談時に「複数社の比較+決定理由」を言語化させることで、あいまいなままの情報蓄積を避け、納得感のある選択へ導く効果も期待できます。
●行動と感情の可視化
可能な学生には、定期的に「今月の行動・気づき・気分」の振り返り・フィードバックを実施することで、不安や停滞の兆しを早期に察知し、自身でも不調に気付き相談行動につなげることにも寄与するでしょう。
●多様な進路の発信
先輩(内定者)の、“迷い・再考のストーリー”を共有する機会・小規模イベントを開催することも有効打になるかもしれません。「正解(結果)」にフォーカスするのではなく、「納得(過程)」を可視化することで、他者比較ではなく自己基準で将来と向き合うきっかけにつながります。
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【データで見る接触の変化】
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<接触企業数(平均)>
24卒 21.4社
25卒 22.4社
26卒 25.3社
27卒 22.2社
<志望企業数(平均)>
24卒 6.5社
25卒 7.0社
26卒 6.7社
27卒 6.5社
<今後「志望企業を増やしたい」と感じる割合>
24卒 81.3%
25卒 80.1%
26卒 74.0%
27卒 71.7%
量の最適化と、情報整理の早期化が進行しています。「接触量」よりも「比較材料」の質が勝負の時代に移りつつあります。
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【まとめ】
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27卒の就活は、“時間と納得”がキーワードと言えるでしょう。就活に限らない話かもしれませんが、現代は“時間の使い方と選択の質”が鍵となる時代です。情報量が飽和する中、学生は「量より質」を意識し、短い接触時間の中で自分にとっての“決定軸”を見極めようとしています。
企業・大学ともに、「短く・分かりやすく・納得できる形」で学生に伝える力が問われています。もはや就活は“数をこなす戦い”ではなく、“限られた時間をどう使い、どう選ぶか(選ばれるか)”の戦いへと移行しています。
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いかがでしたでしょうか。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
〔ブンナビ編集長 間宮 康之〕
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