2025.12.09メールマガジン

インターンシップがキャリア選択を阻害する可能性

「インターンシップを経験すれば、入社後のミスマッチは減る」。多くの人が、そう感じているのではないでしょうか。確かに仕事に近い体験をすれば、入社後に感じるギャップは小さくなるので、その通りだと思います。しかし最近の就職活動プロセスを見ていると、インターンシップがキャリア選択の幅を狭め、その結果、ミスマッチを助長させるリスクがあるように感じます。

◆合説からインターンへ──変わった「最初の一歩」
かつての就職活動では、企業とのファーストコンタクトは合同企業説明会が主流でした。20~30分程度で企業説明と質疑が完結し、1日で5~6社の話を聞くことも珍しくありませんでした。短時間ながら接触社数を確保し、そこから興味のある企業にエントリーしていく――そんな就活プロセスです。

ところが今は、最初の接触がインターンシップやオープン・カンパニーに置き換わりました。インターンシップであれば5日間以上、1日や半日型のオープン・カンパニーでも複数社に参加するには、相応の時間と労力が必要です。1社と深く関われるメリットはありますが、接触できる社数は限界があります。

また、プレ期(就活ルールの広報開始3月より前の期間)の早期選考が拡大したことで、企業と接触した後、多くの学生は早いタイミングから選考ステップに進んでいきます。それにより接触できる企業数はさらに制限されてしまう。こうした構造的変化は、学生の活動量データにも如実に表れています。
───────────────────────────────
<就活ステップ別の活動量>
───────────────────────────────
卒年 エントリー社数/エントリーシート提出社数
2022年卒 31.2社/19.4社
2023年卒 30.8社/18.2社
2024年卒 27.9社/18.0社
2025年卒 24.0社/15.3社
2026年卒 19.6社/10.8社
(弊社『新卒採用戦線総括2026』より)

2022年卒と比較すると、エントリー社数は3分の2以下、エントリーシート提出社数は約半分まで減少していることが分かります。

◆ キャリアの“焦点化”を妨げる構造
『多様なインターンシップ経験と効果の一考察』という論文(※)では、将来のキャリアについて興味が絞られ、明確になっていくことを“焦点化”と呼び、インターンシップが与える影響について述べています。それによれば、大学の学びと仕事の連続性が低い文系学生において、焦点化を促す要因は「期間」より「社数」であることが確認されています。

膨大なキャリア選択の中から、大きな方向性を見つけるには、最初に一定数以上の企業と接触する必要があるのでしょう。この観点で振り返ると、現在の就職活動は、ファーストコンタクトがインターンシップ等の時間を要するものに移行したことで、十分な企業数と接触できないまま就活を進めていく学生が増えていると言えます。

プレ期は本来、幅広い業界や企業を知り、自身のキャリア探索を進めていく期間です。しかし実際には早期選考が拡大したことで、学生は「どの企業のインターンシップに応募するか」を考える段階で、事実上の志望企業を絞るようになりました。

結果として、就活を意識する前から知っている大手企業など、特定の企業に募集が集中します。インターンシップ自体はミスマッチを減らす効果があるものの、その手前のキャリア探索が機能しなければ、本末転倒と言わざるを得ません。

◆ まずは“幅広く知る”ステップを
どうすれば学生のキャリア選択を支援できるのでしょうか。学生の就活プロセスは多様化しているので、「これで解決!」と言えるような正解があるわけではありません。ですが、ファーストコンタクトのあり方を再考し、一定数以上の社数と接触することが重要であることは確かでしょう。

キャリア観を醸成していく過程では、学生の考えは大きく揺らぎ、変化していきます。この時期に少ない選択肢から企業を選ばなければならないのであれば、ミスマッチを減らすどころか、学生の可能性を狭めてしまいかねません。インターンシップによるミスマッチ抑制の意義を認めるからこそ、その手前で大きな方向性を見出すためのキャリア探索というステップが必要といえます。

───────────────────────────────
●ナラティブを意識して異なる分野の企業情報を提供
●業界や仕事の構造を横断的に理解できるコンテンツ開発
●気軽に企業に質問できる機会提供 ・・・など
───────────────────────────────

こうした視点で、学生がより良いキャリア選択をできるよう、そして企業が多様な学生と出会えるよう、ファーストコンタクトをどう設計していくのか。新卒採用に関わる皆さんとの対話を通して、考えていきたいと思います。
〔就職情報研究所 所長 平野 恵子〕

※多様なインターンシップ経験と効果の一考察
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2021/08/pdf/041-057.pdf

メニューの開閉