2026.03.24メールマガジン

【キャリアセンター長・インタビュー】東京都立大学 キャリア支援課 課長 河崎 健児 氏

東京都立の4つの大学である「東京都立大学」(1949年開学)、「東京都立科学技術大学」(1986年開学)、「東京都立保健科学大学」(1998年開学)、「東京都立短期大学」(1996年開学)が再編・統合され、2005(平成17)年に「首都大学東京」となった。2020年(令和2)年には現在の校名となり、東京都が設置するただ一つの総合大学として、7学部23学科、7研究科を擁し、約9,000名の学生が学問を修めている。

今回は、東京都立大学キャリア支援課・課長の河崎 健児氏にお話しを伺った。

▼低学年向けキャリア教育「現場体験型しごと研究(実習)」
本学のキャリア教育を象徴するプログラムとなっているのが「現場体験型しごと研究(実習)」(※1)です。2005年の開学以来、キャリア教育科目の正課授業「現場体験型インターンシップ」として実施してきましたが、2024年4月から現在の名称となりました。

全学部生を対象にしていますが、1年生の履修が9割近くを占め、低学年キャリア教育という位置づけで定着しています。コロナ禍の影響で参加人数が低迷した時期もありましたが、現在はかなり回復しており、2025年度の実績で言えば、約300名の学生が履修しました。1学年の人数が約1,700名前後なので、2割弱の学生が履修していることになります。

前期開講の授業なので、1年生は入学早々に事前学習がスタートし、準備を進めていきます。実習先一覧から第5希望までを提出してもらい、実習先を調整するのですが、受け入れ人数よりオーバーする場合は、一緒に提出された希望理由などを加味して、キャリア支援課でマッチングしていきます。近年は希望マッチ率が高く、ほとんどが第5希望以内で調整できている状況です。

仕事とのつながりが強い学科の学生は、関連する実習先を選択する傾向がありますが、あえて全く異なる分野を選ぶ学生もいます。それぞれに自分の将来を考え、意図を持って選んでいるようです。就職活動とは切り離された教育目的のカリキュラムなので、自由度の高い選択ができているように思います。

夏季休暇中に5日間以上の現場実習を経験した後、成果報告書を提出します。実習のプログラム内容は、基本的に受け入れ先にお任せしていますが、仕事をするリアルな現場を経験することで、キャリア形成のヒントを得ているのでしょう。顔つきや雰囲気が変わったな~と感じる学生が少なくありません。また求められる知識やスキルを理解し、学習意欲の向上にもつながっています。

▼大学ならではのキャリア・就職支援
世の中には、就活関連の情報やサービスが溢れています。YouTubeなどの動画サイトには、就活テクニックを紹介する動画が数多くありますし、情報会社のイベントでも様々な情報提供がなされています。私たちが似たものを提供しても、あまり意味はないでしょう。だからこそ「大学ならではの資源」を活かしたキャリア支援を大切にしています。

さきほどの「現場体験型しごと研究(実習)」もその一つです。採用活動を意識した3年生(院1年生)対象のインターンシップは、情報サイトなどで探すことができます。しかし採用とは関係なく、低学年を対象にした実習先を紹介できるというのは、本学ならではの資源と言えます。開始以来、長きにわたり協力いただいている団体・組織の皆さまには、改めて感謝申し上げます。今後も、伝統ある本カリキュラムを、より充実したものに発展させていきたいと考えています。

OBOGや内定者のネットワークも、「大学ならではの資源」と言えます。OBOGネットワーク制度(※2)を利用することで、学生は先輩を探し、キャリア支援課を通して、OBOG訪問の依頼をすることが可能です。また「OBOG交流会」や「OBOG座談会」では、一度に多くの卒業生と対話することができます。社員としてではなく、母校の先輩として本音で話をしてくれるOBOGという存在は貴重です。そこから自身の価値観や生き方が少しずつ形成されていくように感じます。

就職活動を終えた学生が、後輩の就職個別相談に応じる“就職活動アドバイザー”も「大学ならではの資源」です。毎年変化する採用選考のリアルを知るには、同じ大学の先輩が経験した情報やアドバイスが最適です。外部サービスでは得にくい支援と言えるでしょう。

時代の変化に合わせて、私たちも変わっていかなければなりませんが、変わらずに大切にしたいこともあります。私自身は“やり過ぎない”ことを大切にしてきました。手をかけ過ぎれば、学生の主体性を奪ってしまう。

少しだけ背中を押して、あとは学生自身の力で前に進んでもらう。回り道になるかもしれませんが、学生の成長を最大化するために、この距離感を大切にしています。

▼キャリア就職支援のこれから
本学は4つの大学が再編・統合されているため、就職先は多岐にわたります。幅広い業界・企業、公務員や医療・福祉といった多様な分野の支援が求められます。また修士や博士課程の進学を検討する学生もいますし、博士課程の学生には異なるキャリア支援が必要です。限られたスタッフで対応するのは容易ではありません。

そのための工夫として、学生のニーズに沿った対応を心がけています。情報提供などがメインのガイダンスや講座は、オンライン・対面の使い分けを意識し、また都立大キャリア支援システムからアーカイブ配信しているので、まずは視聴することを推奨します。基本的な疑問や質問には、これで対応可能です。

キャリアカウンセラーは、個別支援が必要な学生に対し寄り添った相談に注力できるようにする。こうした体制づくりをさらに進めていく必要があるでしょう。

従来通りの支援では、対応の難しいことが増えてきました。日程ルールの「3月広報開始」に合わせて、学内合同企業説明会を実施していますが、早期化により学生の参加には苦慮しています。

11月から企業研究セミナーとして、企業紹介の場を対面とオンラインで設けていますが、状況はあまり変わりません。どんなプログラムを、どんなタイミングで行えば学生ニーズにマッチするのか。支援プログラムの再設計が必要になっています。

新しい試みも始めています。お昼休みを使った「オープンキャリア」はその一つです。キャリアセンターを身近に感じてもらい、来訪のハードルを下げる目的で、ランチ時に交流会のような催しを行っています。

まだ規模も小さく、手探りな状態ですが、できることから取り組んでいます。私自身は今春に現在の職を離れますが、スタッフ達の新しい取り組みに期待をしています。

▼大学生活の先にあるキャリア形成
本学の伝統的な行事として、7月に行われる大阪公立大学との総合競技大会、阪公戦(旧、府大戦)(※3)があります。6月にも横浜市立大学との横市戦(※4)があり、様々な競技で熱戦を繰り広げています。体育会だけでなく、例えば、毎年「鳥人間コンテスト」で活躍する2つの団体をはじめ、様々な部活やサークルで、学生たちは熱心に活動を行っています。

学問を修めるだけでなく、こうした課外活動も含めて、キャンパスは学生の実践的な経験や社会的交流を深めていく“場”となっています。学生が学生らしい大学生活を過ごすこと。これが人間としての総合的な成長を支え、就職活動で役立つスキルも涵養していきます。しかし、最近はそれが難しい状況になっているようです。

早い時期から卒業後の自分について考えることは大切ですし、それが長期化することに問題は感じません。しかし、早いタイミングから就職活動が始まってしまうことには懸念があります。大学生活のなかで、自分の将来と向き合う時間が必要です。また、日程ルールとは異なるタイミングで早期選考を実施することで、「大人がルールを守らない」姿勢が示される弊害もあるでしょう。

本学の学生は、地に足のついた真面目さがあると評価いただくことがあります。それは、自然が豊かな環境のなかで学問と向き合い、学生同士の交流のなかで育まれるものです。学生が充実した大学生活を過ごした先に、キャリア選択があり、就職活動がある。その過程で必要な支援を、これからも提供していきたいと思います。
〔就職情報研究所 所長 平野 恵子〕

※1
現場体験型しごと研究(実習)
https://career.tmu.ac.jp/internship/

※2
OBOGネットワーク制度
https://career.tmu.ac.jp/for_alumni/obog.html

※3
阪公戦
https://gs.tmu.ac.jp/activities/hankosen.html

※4
横市戦
https://gs.tmu.ac.jp/activities/yokoichi.html

───────────────────────────────────
<大学データ>
●東京都立大学
〒192-0397 東京都八王子市南大沢1-1
Tel:042-677-1111(代表)
https://www.tmu.ac.jp/

キャリア支援課(7号館1階)
Tel:042-677-1140
E-mail:tmu-career@jmj.tmu.ac.jp

「現場体験型しごと研究(正課授業)」に関すること
Tel:042-677-1342
E-mail:shigoto-kenkyu@jmj.tmu.ac.jp

[学部]
人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、
都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部

[大学院]
人文科学研究科、法学政治学研究科、経営学研究科、理学研究科、
都市環境科学研究科、システムデザイン研究科、人間健康科学研究科

メニューの開閉