2025.11.25メールマガジン

【キャリアセンター長・インタビュー】東京都市大学 大学教学局 局長 住田 曉弘 氏

東急大井町線・尾山台駅から徒歩圏内にある世田谷キャンパスは、中長期計画「アクションプラン2030」の一環として敷地面積の約3分の1をリニューアルし、教育・研究環境を大きく充実させた。港北ニュータウンの一角、横浜市営地下鉄・中川駅から徒歩5分に位置する横浜キャンパスは、教育機関として初めて<ISO14001>を取得した実績を持ち、通称”エコ・キャンパス”として、さまざまな工夫が凝らされている。そして2025年4月、イノベーション人材の輩出を目指し、社会人のリカレント教育などを提供する「TCU Shibuya PXU」を渋谷に開設した。
今回は、東京都市大学、大学教学局長の住田 曉弘氏にお話を伺った。

▼入学前から卒業後までのエンロールメント・マネジメント
本学の学修のベースには「社会に出てからちゃんと活躍できる人材を育てる」という思いがあります。そのために、入学前から卒業後までを視野に入れたエンロールメント・マネジメントを推進しています。「どんな高校生に本学の情報を届け、引き付けるのか」「在学中の支援は、エビデンスを用いてどう提供していくのか」「卒業後をイメージした成長プロセスをどう回していくのか」など、連続性のある支援プロセスによって、学生の育成を促していきます。

大学進学を考えるすべての高校生に、本学を勧めたいわけではありません。本学の教育にマッチし、確実に成長を支援できる1学年1,800名に入学してもらうための仕組みを大切にしています。例えば、「オープンキャンパス」では大学の雰囲気をリアルに感じてもらうためのプログラムを数多く用意しています。また、「オープンファカルティ」という学科主体の少人数型の演習的イベントでは、専門的な大学の学びに触れることが可能です。さらに深い学びの体験として「オープンミッション」(※1)という探究型イベントも実施しています。約3ヶ月かけて、設定されたテーマに取り組むことで、社会課題解決のフローを体験できます。こうした体験型プログラムなどを通じて、「ここで4年間を過ごしたい」と感じた学生に入学してもらうことを目指しています。

卒業後の見通しを示すことも必要です。「こんな風に活躍する社会人になれる」というロールモデルを紹介するなど、未来の自分をイメージできるような対応も重視しています。エンロールメント・マネジメントは「志願→入学→在学→卒業→同窓」までのライフサイクルを意識した支援なので、一貫した設計が求められます。これからもより良い取り組みを展開していきたいと考えています。

▼4年間のキャリア形成と成長プロセス
本学は、大学卒業時に学修成果を客観的に把握できる「ディプロマサプリメント(以下、DS)」を発行していますが、各年次終了時にも「プレ・ディプロマサプリメント(以下、プレDS)」を発行し、成長支援に活用しています。

具体的な運用としては、入学後のキャリアガイダンスで1年間の修学目標と取り組みを設定し、半年後に振り返りを行います。1年の終了時には、学修活動や課外活動の成果を記したプレDSを発行し、それをもとに次年度の目標を設定します。2年次までは全学生を対象に実施することで自身の成長を可視化し、PDCAを習慣化させる狙いがあります。

3年次からは自主的な運用になります。日々の取り組みを入力し、蓄積していけば、就職活動にも役立てることができるでしょう。しかし、すべての学生が十分に活用できているわけではありません。より有効に活用してもらうため、適切な目標設定を促し、成長を後押しするアプローチが課題と言えます。卒業生のプレDSとDSを開示して、4年間の成長プロセスを具体的にイメージできるような取り組みを検討しているところです。

プレDSは、本学の独自システム「TCU-FORCE(※2)」で運用しています。履修履歴や課外活動(部活動やアルバイトなど)、留学、資格(TOEICなど)といったキャリアポートフォリオ機能だけでなく、2023年度からは社会に必要な5つの力「都市大力」(自立の力、問いの力、価値創造の力、協働の力、智と実践の力)もレーダーチャートで見られるようになり、より成長プロセスを可視化できるようになりました。

▼特徴的な教育プログラム
本学では1年次から3年次まで、全学必修で演習科目「SD PBL(SustainableDevelopment Project organized Problem Based Learning)」を実施しています。1年のときは同じ学科内でチームを組み、基礎知識とチームワークを学んでいきます。2年では、より高度なPBL課題に取り組んでもらい、3年になると学科横断でチームを組みます。それぞれの専門性を活かして社会課題に取り組むことで、修めている学問領域を俯瞰して捉える機会にもなっています。こうして理論と実践、基礎を鍛えた上で、4年からは研究室での研究活動に取り組んでいくのです。

1年次から学科横断で参加できる「ひらめき・こと・ もの・くらし・ひと」づくりプログラム(※3)も、本学らしい取り組みと言えるでしょう。選抜制になりますが、より実践的なテーマを設定して、例えば収支の試算やテストマーケティング、実務家の外部講師によるフィードバックを受けながら、現実可能性の高いレベルまで取り組みを進めます。課題解決に臨む社会人の先行体験ができる内容と言えるでしょう。

語学教育でも独自のプログラムを展開しています。「東京都市大学オーストラリアプログラム(TAP)」(※4)は登録時の英語力は問いません。100日間の語学準備講座を受けることで、約4ヶ月間の留学を経験することが可能です。帰国後TOEICスコアが平均100点以上アップしているという成果は、参加学生の自信につながるでしょう。他プログラムを含め、現在では4人に1人が海外留学を経験するまでに定着し、さらに拡大しています。

▼キャリア教育の思想
本学のキャリア・就職支援は、以下のような考えをベースにしています。
——————————————–
就職力 ≒ (基礎力 + 専門力)× 職業的態度 × 就職活動力
——————————————–
私たちは「就職力」を学修や態度を含めた複数の要素で捉え、低学年から時間をかけて育むものという認識で、4年間のキャリアサポートを設計しています。エントリーシート対策や面接練習といった“就職活動力”は「就職力」の一要素であり、3年生後半からでも十分に間に合うのではないでしょうか。

学生が自身のキャリアを整理していくには、[1]自分を知る、[2]社会を知る、[3]自分を磨く、というサイクルを回すことが必要だと考えています。「[1]自分を知る」では、エビデンスに基づいた履歴や経験などの「客観的な側面」、本人の理想や要望といった「主観的な側面」の2つを整理する必要があります。このときTCU-FORCEに記した内容が活きてくるはずです。

「主観的な側面」を内省だけで捉えてしまうと、現実的なものにならない可能性があるので、「[2]社会を知る」というステップが必要です。実社会への理解が深まれば、主観的な側面の解像度が上がり、求められる能力や態度が見えてきます。そして「[3]自分を磨く」段階へと入っていきます。大学生活のなかで、このサイクルを繰り返し回しながら、少しずつ自身のキャリア開発を進めていけるような道筋をつくっていきたいですね。

学生をサポートするときは「スモールステップ」というアプローチを大切にしています。学生は高い目標を掲げがちですが、それでは達成できなかった経験が増えていき、「できない自分」という認識を強めてしまいます。小さな成功体験を積み重ねながら、自己効力感を養っていくことが求められます。

日々の取り組みのなかで小さな挑戦をして、頑張る。そして失敗を揶揄せず、賞賛する。こうした雰囲気を醸成していければ、成長する文化が根づき、それが校風となっていくでしょう。ほんの少し背中を押すだけで、大きく成長する学生が数多くいます。そのきっかけとなるような支援や環境をつくっていきたいですね。

▼これからの取り組み
大学では変化の激しい社会で活躍できる人材を輩出するため、より高い能力や職業的態度を育み、学び続ける習慣を身に付けていく必要があるでしょう。しかし、3年生になれば、すぐに就職活動を意識せざるを得ない状況です。2年間しか大学生活を送っていない学生は、自分を知り、社会を知り、自分を磨くというキャリア開発の途上にあります。早すぎるキャリア選択はミスマッチにつながりかねません。企業と大学の対話を通して、より良い方法を考えていきたいと願っています。

社会人となってからは、卒業生として校友会を通したつながりを展開しています。校友会による進路相談会では、約100社の卒業生が現場目線で学生からの相談に応じています。身近なロールモデルとの対話で、卒業後の自分イメージが明確になるのでしょう。具体的なキャリア選択も進みやすいようです。

また、今春に開設された「TCU Shibuya PXU(東京都市大学 渋谷パクス)」(※5)では、社会人のリカレント教育を提供しています。新たに本学で学ぶ社会人学習者も含めて、「都市大で学んだ人々」のコミュニティを形成し、協働体制をさらに強化していきたいと考えています。

本学は「都市を舞台にイノベーションを起こす大学」を目指しています。その実現に向けて、頑張るのは学生ばかりではありません。教職員も同様です。例えば、社会の変化を身近に感じ、学生のことを理解しているキャリア支援課メンバーが教育開発に関わるなど、教職員が共に考え、行動するスタイルで、新たな取り組みを進展させています。

文部科学省の「令和6年度 私立大学等改革総合支援事業」では、全4タイプに本学の取り組みが選定されました(※6)。私たちの頑張りが、こうした成果につながることは素直に嬉しく思います。まだやるべきことは多々あります。現状に満足せず、今後もさまざまな取り組みを進めてまいります。
〔就職情報研究所 所長 平野 恵子〕

※1
探究イベント「OPEN MISSION」
https://www.comm.tcu.ac.jp/nyushi/openmission/

※2
TCU-FORCE
https://apuer.tcu.ac.jp/wordpress/wp-content/uploads/2019/05/tcuforce_guidebook_201905.pdf

※3
「ひらめき・こと・もの・くらし・ひと」づくり プログラム

TOPページ

※4
東京都市大学オーストラリアプログラム(TAP)
https://tap.tcu.ac.jp/

※5
TCU Shibuya PXU(東京都市大学 渋谷パクス)

top

※6
文部科学省「令和6年度 私立大学等改革総合支援事業」
https://www.tcu.ac.jp/news/all/20250213-61892/

───────────────────────────────────
<大学データ>
東京都市大学
https://www.tcu.ac.jp/

●世田谷キャンパス、キャリア支援課
〒158-8557 東京都世田谷区玉堤1-28-1
TEL:03-6809-7572(部署代表)
E-mail:sccareer@tcu.ac.jp

●横浜キャンパス、キャリア支援課
〒224-8551 神奈川県横浜市都筑区牛久保西3-3-1
TEL:045-910-2525(部署代表)
E-mail:yccareer@tcu.ac.jp

就職担当教員一覧
https://www.tcu.ac.jp/recruiting/recruit/chargeteacher/

[学部]
〇世田谷キャンパス
理工学部、建築都市デザイン学部、情報工学部、都市生活学部、人間科学部

〇横浜キャンパス
環境学部、メディア情報学部、デザインデータ科学部

[大学院]
〇世田谷キャンパス
総合理工学研究科、環境情報学研究科(都市生活学専攻)

〇横浜キャンパス
環境情報学研究科(環境情報学専攻)、情報データ科学研究科

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

メニューの開閉