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2020.07.15 21卒採用が残したもの

21卒の採用活動は、年明けとともに広がったコロナ汚染によって採用活動が中断され、内定時期が大幅に遅れるなど大混乱となった。とくに就職情報が解禁された3月以降は、コロナ回避ということで企業や学生の行動が制限されたことで大規模な合同説明会が中止され、採用活動の多くがオンラインによるWEB説明会や面接となって進行、4月中旬には緊急事態宣言が発動され21採用はストップしてしまった。それでも5月末に宣言が解除されるや、企業は一斉に採用活動を再開。内定のピッチを一気に上げて、6月末に21採用活動を終了した。

こうした21卒採用の総括レポートは別途報告するが、早くも22卒のインターンシップがスタートしているので、今回は次年度への検討材料ということで、21卒採用の特徴をいくつか挙げてみよう。

1.コロナショックがあっても採用意欲は旺盛だった
まず、企業の採用意欲はどうだったか。昨年末までは、日本経済が好調ということで21卒の採用計画は、どの企業も昨年同様、積極的だった。しかし3月に新型コロナウイルスの感染拡大とともに企業の業績に大きな影響が出始めると、採用計画を見直す企業が相次いだ。

そうした中で、6月29日に日経新聞が「採用計画調査」を発表した。この調査によれば、21年春入社の大卒の採用人数は10万8116人と昨春より2.6%の微増となり、全体としてコロナショックがあっても人材ブームは継続していることを示した。だが、その伸び率は10年ぶりに低かったと報じた。

このように若干の陰りを見せた21採用だが、リーマンショックの時と違って、企業の多くが経営環境悪化の中でも新卒採用を中止したり、内定取り消しをしなかったりしたのが、今回の特徴だった。

2.採用活動はコロナで中断したが、6月末終了
21卒を対象とする昨年夏のインターンシップは、それまでになく盛況であった。それを受けて、秋からの企業のプレ採用活動も活発だった。当社の調査では、年末までに学生たちの8割がインターンシップを経験、学外の就活講座・イベントに参加した学生が7割、企業からの連絡で社員と会っていた学生が2割、エントリーシートを提出していた学生が3割、面接に参加していた学生が2割もいた。いずれも一昨年より活発な動きだった。

その早い動きは、年明けからの学生の早期内定を促した。
3月下旬で19%(昨年は14%)、4月上旬で34%(25%)、4月下旬で50%(42%)というペースだ。この動きから21採用は5月中旬には終了するとみられていた。

だが、4月からの新型コロナ汚染の急拡大によって採用環境は暗転。企業の採用活動に急ブレーキがかかり、4月中旬から5月下旬までの採用活動は停滞、内定率は54%に留まり、この時点で昨年の内定率60%を大きく下回った。

採用活動が再び動き出したのは、緊急事態宣言解除後の6月上旬からで、企業は最終面接を残していた学生の内定を一斉に出した。しかし、最終選考時期が重複していたこともあって、学生の内定辞退も多く、採用計画人数が未達となったままの企業が続出することになった。

すでに7月からは、22卒採用活動をスタートしているので、こうした企業は、このまま21採用は終了ということになるだろう。これも21採用の残したものとなる。

3.インターンシップが採用活動の基本軸に
本来ここ10年、就業体験を目的とするインターンシップが企業の採用プログラムに変質、企業広報にとどまらず企業のプレ選考活動として年々増加している。その増加傾向の中でも、ここ数年大きな変化といえるのが、実施期間の短縮である。2週間から8日そして5日と短縮され、昨年は一日というインターンシップが過半数を占めるようになった。

これはインターンシップでなく企業見学会であり、一日企業研究会といったほうが良いが、学生たちには気楽に企業を知ることができると、評判は悪くはない。こうしたインターンシップは企業にとっては、選考活動のスタートであり、学生にとっても就職活動開始の契機となっている。今年も就活学生の8割が年末までに夏インターンシップ参加経験ありと回答していたが、その9割が一日企業研究会だった。

こうしたインターンシップの採用ツール化は、数年前から急速に進み、夏インターンシップ参加学生の一部が、秋・冬のインターンシップやワークショップに招待され、早期選考ルートに乗り、早期内定するというシステムが一般的になった。

今年は、こうして囲い込まれた学生たちが、2月には面接段階に達していたので、多くの企業がコロナ汚染で採用活動中断となったなかでも、一部の企業はスケジュール通りに面接を受け、4月中に内定を獲得できたのである。

コロナ汚染で多くの企業が採用活動中断となった21採用では、このコアとなる学生を企業が、早期に一定数確保していたかどうかが採用の成否を分けることになった。

4. オンライン採用が急拡大し、定着へ   
採用活動が一転、オンライン採用採用に移行したことが今年の最大の特徴といえる。コロナ禍における21採用は、未曾有の混乱のなかで取り組まれたが、大手企業に限って言えば、採用活動は前年より一か月遅れのスケジュールとなって、とにかく終了した。コロナ回避策として急遽導入したオンライン採用が予想以上にスムーズに活用されたからだ。

その背景には長年にわたる採用ノウハウの蓄積やインターネットによる採用広報活動やAI採用に取り組んでいた企業の底力と学生のITリテラシーの高さが発揮されたのである。

これまで企業は、オンライン採用への関心は高かったものの面接やグループディスカッションなどの選考後半段階での導入は少なかった。しかし今年はコロナ汚染拡大で、コロナ汚染を回避しながら採用活動を可能にする採用ツールということで大手企業が一斉に飛びついた。これまで企業は、企業内ネットワークの無線化、大量データの利活用、AI活用、電子会議システムの運用に取り組んでいたので、オンライン採用にストレスはなかったのである。

企業のオンライン採用採用への切り替えは迅速で、採用セミナー、会社説明会、グループディスカッション、座談会、面接・面談など多岐にわたった。

この採用方法の切り替えに直面した学生たちの反応も一昨年とは違い、不安感はなく、むしろ積極的で歓迎のスタンスへと変わった。それは、コロナ回避だけでなく、オンライン就活をすることのメリットを知ったからだ。

現在のオンライン採用についての評価は、コロナ再燃の可能性との兼ね合いによるが、今後の採用活動の基本に据えるのか一時的な導入なのかという検証はこれからだ。

5.今年も人気後退した銀行 
コロナショックがあっても学生の就職人気企業はあまり変わらなかった。21卒学生が就職したいと思う企業はどこか。当社恒例の就職ブランドランキングの結果は、伊藤忠商事、全日本空輸、日本生命、大和証券、明治グループがトップ5。以下、広告代理店、総合商社、印刷、損保、空輸と続いた。

調査期間は2019年10月から2020年3月15日だから、コロナの影響が出始めたころの調査といえる。ランキング上位の企業を見るとどの企業も各業界のトップ企業ばかりだが、近年は、テレビや雑誌で最前線のプロジェクトなどで活躍する若手社員を紹介する企業のイメージ広告や身近な商品や生活情報を流している企業が人気を集めているのが特徴だ。コロナショックの影響ということでは、空輸、旅行関連が順位を下げたが、目立つほどではなかった。

注目は、今年も銀行が人気後退したことだ。とくにメガバンクが顕著だった。
みずほFG(7→15位)、三井住友(30→42位)、三菱UFJ(12→33位)、りそなG(16→20位)など、昨年に続き軒並み順位を下げている。

一昨年から新聞、雑誌で人口減少、超低金利政策の継続、電子商取引やフィンテックの発達で銀行経営が苦境に陥っているとの報道が氾濫。銀行も事業の統廃合やリストラを進めるだけでなく、採用人数を年々縮小していることが話題になっていることからも学生を不安にさせているようだ。

6.新しい採用の模索
働きかた改革やSociety5.0の進展だけでなくコロナ汚染爆発によって新卒採用は大きく変化しようとしている。学生たちの就職動機にも企業の働きかた改革への取り組みが重視されるようになった。そのため企業も初任給の年俸化、配属先の先決め、勤務地の選択制、キャリア支援などを掲げた採用が現れ始めた。

Society5.0時代を念頭に置いた採用も始まった。そこで求められる人材像は、文系か理系かといった特性でなく、リベラルアーツ(一般教養)を基盤とした能力である。そのため新しい採用チャネルの開拓や能力テストの開発が始まった。

新しい採用方式の模索ということでは、コロナ回避ということで対面型の採用活動が大きく制限される中で就職ナビやホームページの役割が再評価されたが、こうした企業情報を見て応募する学生にアプローチするのでなく、就職情報業者や自社の持つデータベースから求める人材を発掘して直接学生にスカウトメールを送って選考を呼びかける採用システムや若手社員などのネットワークから人材を見つけて採用するという採用システムも見直された。ダイレクトリクルーティングやリファーラル採用である。

これに比べて、次の時代の採用手法として期待されているジョブ採用は、数年前から一部の企業で導入されていたが、スキルの評価が難しく専門職の採用や技術系の大学院卒を対象にするにとどまっている。また、通年採用も次の時代の採用として話題になっているが、実態とし採用活動が早期化している現状では、新鮮味はなくなっている。

これらの採用手法は、いずれも数年前から一部の企業で導入されていたが、とりたてて良い評判は聞こえてこない。いまだに就職サイトが圧倒的に効率的で採用効果が大きいからだろう。だがコロナ汚染の再燃が懸念される22卒採用では、就職サイト中心の採用活動を補完するサブ採用システムとして、これらの新しい採用手法に取り組む企業が少しは増えそうだ。(夏目孝吉)

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