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2020.01.14 エンゲージメント採用が始まった。

 最近、エンゲージメント(engagement)という言葉が人事関係者の間で話題になっている。一般にエンゲージメントといえば、婚約とか契約ということだが、人事用語では、社員の会社に対する「愛着心」や「思い入れ」「つながり」を表すものと説明されている。しかし、その定義や使い方には、かなり幅がある。例えば、昨年の労働経済白書では、「働きがい」に関連してエンゲージメントが取り上げられ、「仕事から活力を得て、いきいきとしている(活力)、仕事に誇りとやりがいを感じている(熱意)、仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の3つが揃った状態」と説明していた。

 また、経団連の中西会長は、昨年末の定例記者会見で「現下の日本の最大の課題は、生産性向上であり、働き方改革働き手がやりがいをもって仕事に打ち込めるエンゲージメント(やる気)を高める取り組みが必要だ」と語り、モチベーションのような理解を示した。もともとエンゲージメントとは、従業員の仕事に対するポジティブで充実した心理状態のこととされているからだ。そして、このエンゲージメントという概念を人材採用のキーワードにしようというのがエンゲージメント採用である。すなわち応募者にやりがいや思い入れをもって応募してもらい、愛着を持って長く働きたいという人材を採用する活動のことである。では、このエンゲージメント採用は、これまでの採用活動とどこが違うのか。まず、目標とする人材像が違う。これまで企業が求める人材といえば、優秀人材ということで「能力が高く、バランスの取れた人材」だった。

 しかし、エンゲージメント採用が目指すのは、第一に「働きがいを求める人材」であり、第二は仕事や会社に愛着を持つ人材であり、第三は、長期的に能力を伸ばし、能力を発揮する人材である。能力より企業とのマッチングに比重があることがわかる。

 これがエンゲージメント採用の目標人材とすれば、採用のPRポイントは、これまでとはかなり違ってくる。企業としても経営ビジョンへの思い入れ、仕事のやりがい、面白さ、社風などを強調することになるからだ。しかもこれらの情報は、企業側から発信しては説得力が弱い。ここは、経営トップから若手社員までがそれぞれに自分の思い入れを自分の言葉で熱く語る必要がある。そのためにはテレビや雑誌新聞というマスメディアだけでなく、就職サイトやツイッター、ファイスブックなどのSNS、クチコミなどへの情報発信が重要になる。そして、このような思い入れのあるメッセージを就職サイトやSNSに発信すれば当然、それが「いいね」と賛同されたり、「良くない」などと反発されたりして返信される。ときには話題沸騰して論争になることもある。

 だが、こうしたネット上の評判を重視する採用PR活動こそエンゲージメント採用である。企業や社員がネットに登場することによって企業の評判が、形成され、就活学生の間に身近な存在として拡散していく。そのため企業としては、社員のエンゲージメントを高めながら社員が自分から話題になるようなメッセージをネットや就職サイト、SNSで日常的に発信し、閲覧者と活発に交流することを支援する。もちろん、昨今の学生は、ネット情報をそのまま信用することはないが、こうした企業の社員とそれを取り巻く人々から発信される情報があってこそ学生は、企業を深く知るだけでなく、就職志望先に選んだり、企業のフアンになったりする。

 このようにエンゲージメント採用では、就職サイトやSNS、クチコミの活用が大きな特徴になるが、リアルな採用イベントやリクルーター、社員によるリファラル(社員による人材紹介)の役割も重要だ。とくに学生と接する採用担当者や説明会でプレゼンする若手社員、説明会の受付スタッフ、面接官など採用イベントに関わる全てのスタッフの行動こそ学生にとってエンゲージメントの生きた指標になる。学生にとっては、社員が誇りをもって語り、生き生き働いているか、熱い社員がいるかどうか、などを観察することが企業選びの大きな理由になるからだ。

 さらにエンゲージメント採用においては、採用選考の方法も見直されている。例えば、選考基準は、能力や性格、経験、地頭による選考でなく、仕事への価値観や取り組み姿勢となる。そのためには、筆記試験や面接よりグループディスカッションやジョブ型インターンシップでの言動や取り組み姿勢を評価することになる。このほか、採用方法では、社員のエンゲージメントが高い会社ほど、リファラル採用の比重が高くなることも見落とせない。こうした企業の社員は、自分の会社に誇りを持ち、働きがいを感じているからこそ自分の知り合いや優秀な後輩を紹介、採用することに熱心になる。

 つまり、社員のエンゲージメントの高さは、必然的に社員による積極的なリファラル採用を増やすことになるのである。

 このようにエンゲージメント採用は、マッチング重視の採用活動として社員個人の成長と会社の発展を結びつける採用である。その採用活動をあらためて整理すれば、企業は、次のようなメリットが期待できるだろう。
 
1.企業規模や知名度にこだわらない人材を採用できる。
2.ミスマッチのない採用ができる。
3.採用した人材が定着する 。
4.採用活動をする社員のエンゲージメントが高まる。
5.会社全体が採用に取り組み、元気になる。

 すでにスタートした21卒の採用活動では、就職ナビとともにネット上には企業に愛着を持って働く社員の生の声をさまざまに発信しながらフアンづくりをめざすエンゲージメント採用に取り組む企業が登場している。この採用では、企業の知名度や規模に関係なく学生の話題を集めることもできる。その人数は少ないかもしれないが、企業への愛着、こだわりが強いだけにマッチング率は高いはずだ。エンゲージメントに着目した採用の時代が始まったようだ。(夏目孝吉)

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