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2015.08.11 採用担当という仕事を考える

 16卒採用も終盤を迎えた。今年の採用活動は、「指針」によって採用選考が4か月繰り下げられ、大学教育の充実と学生生活の尊重に一歩を踏み出したのは良かったが、多くの企業では、採用活動と内定出しが従来通りだったので、採用活動は、長期化することになった。そのため6月に入ってから内定辞退が激増、準大手企業や中堅企業の採用担当者にとっては、疲労感がひどく残る年となった。今回は、毎年、苦労する割には報われない採用担当者の仕事について考えてみよう。


▼ここ数年、新卒採用では、経営トップから若手社員、内定者までを総動員する会社ぐるみの採用活動が増えている。総合商社、大手保険会社、メガバンクなど就職人気のある大企業ほどこのスタイルで、長期間にわたって優秀人材を発掘、囲い込み、採用している。今年は、「指針」初年度とあって大手企業は、早期から人事担当者が学生と直接、面接する行動は自粛していたが、エントリーシートの受付、WEBテストの実施、面談会などは、年明けからスタート、春には、昨年以上の応募者を集めていた。

こうした大手企業では、エントリー数が、数万人という企業はザラで、これらの応募書類は、4、5人の採用担当者によって1枚ずつ読まれ、選別される。かつて会社訪問で応募を受付けていた時代、採用担当者は、訪問予約をする学生との電話応対で難聴になったというエピソードがあったが、いまでは、連日徹夜で、膨大なエントリーシートを読み込まなくてはならないので、目がしょぼつき、目の乾燥、視野欠損、偏頭痛の症状を訴える採用担当者も多かった。

しかもこのエントリーシート審査は、採用活動の出発点にすぎず、採用担当者は、書類の通過連絡、WEBテストの案内、面談会の通知、社内の面接官への連絡、会場の手当、選考書類作成、大学キャリアセンターへの報告など多くの業務を迅速にこなさなくてはならなかった。その期間もここ数年は、数週間どころか、数カ月に及ぶことが常態化している。だから、今年の夏休みは、どの採用担当者も休暇返上だった。そのため採用担当者は、誰もが自分の職場はブラックだと自嘲している。  


▼だが、これほどハードな仕事でも採用担当者の多くは、仕事に誇りとやりがいを持っている。「企業の将来を担う人材を採用するのだから前向きの仕事ですし、その人の才能や夢を深いところまで聞きながら、採用するのですから満足感はあります。それにいろいろな個性や価値観を持った人と会うことで自身の成長に繋がっているのも実感します。嬉しいのは、自分が選んだメンバーが活躍するのを見ることですね」(住宅
販売/人事部採用主任)と胸を張る。

だが、半年以上も応募者を集めるために大学を訪問したり、就職イベントを開催、書類選考をしたりして、面接の下準備をする採用業務が、ビジネスキャリアとして有効なのかという疑問を持つ採用担当者もいる。「人事、採用という仕事は、会社の中心のようで華やかですが、実際には、地味で、失敗の許されない仕事です。採用した人材がすぐ活躍するわけでもないから、採用担当者の仕事は、応募者数の多さや採用目標
数の達成率、採用した大学の銘柄、採用経費の効率化などでしか評価されない」(サービス関連/人事部マネージャー)と会社からの評価が曖昧なこととで自分自身のキャリア形成に不安を持つ採用担当者も少なくない。


▼たしかに最近の採用業務は、特別な専門性や経験を必要としない。だから採用や面接のカリスマといわれる採用担当者も見当たらない。応募者を大量に集める企画力や効率よく採用活動を運用する計画性や社員動員力が採用業務の中心となっているからだ。

そこで、最近の採用担当チームは、大手企業でも社内ネットワークを強力に持つ若手課長を軸に入社5年前後の馬力ある社員を配置、当面の目標に対して肉弾戦のできる体制となっている。だが、そうなるほど採用業務は、専門性を磨き、ノウハウを蓄積する余地が少なくなり、誰でも馬力があれば、できる業務となっていく。そのため多くの企業では、採用業務は、キャリアとしての評価が低く、数年で交代する若手の初期キャリアに位置付けられている。

さらに今後は、一括採用の崩壊、部門別採用の導入、通年採用の拡大、アウトソーシングの進行が予想されるだけに採用業務の経験は、ビジネスキャリアとして希薄なものになると思われている。


▼だが、こうした不安に対し、採用担当者のキャリアを高め、もっと人事全般のプロとして活躍してもらおうという動きもある。これは、中堅商社の例だが、人材採用を経営戦略の重要な軸と位置付けて採用チームを経営トップに直属、人材プロジェクトとして立ち上げ、採用予算を管理し、採用体制を設計し、採用スケジュールを管理するだけでなく、企業が必要とする将来の人材像の設計から選考基準の作成、人事評価さらには社員の教育にまで取り組む。

そのためには、採用に関する広報、イベント、選考試験、応募者管理など外注できる業務は、できるだけアウトソーシングする。この人材チームは、全員が人材のプロジェクトマネージャーという位置づけで任期は4年、採用から教育、定着まで責任を持つ。

そのためこのプロジェクトマネージャーには、人事、採用の専門知識だけでなくコミニュケーション能力、情報収集・分析力、タイムマネジメント力、教育力が要求される。こうした動きは、体力勝負だった採用業務に採用担当者のキャリア形成を広く促すということになる。採用担当者にとって厳しいけれど、魅力的なテーマといえるだろう。もっとも企業が、採用担当者のキャリア形成に気付くことが先決だが。



[15.08.11]
就職情報研究所 顧問 夏目孝吉

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