就職情報研究所 人事&採用活動に関するコラムとDATA

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[12.01.10]「一陽来復」を実感できる一年に

謹賀新年 本年もよろしくお願いいたします。限られた紙面ですが、採用活動や学生の就活について、知ったこと、感じたこと、憤慨したことを報じていきたいと思います。ご愛読いただければ幸いです。

◇昨年は、東日本大地震が発生、日本社会に大きな打撃を与え、いまだにその傷跡は深く、回復も端緒についたばかりです。その回復過程で日本の産業界は、非常時への対応力だけでなく、回復する力、再生のビジョンづくりが要求され、それぞれの業界は、きびしい経営環境の中で、次の時代に向けた事業戦略に取り組むことが喫緊の課題となりました。

思い返すと、震災発生時の3月11日は、新卒採用の開始時期と重なり、就職活動は大混乱となるところでした。しかし、震災が発生してからの企業の対応は、見事なものでした。混乱した環境の中でも企業は、学生の安全を優先して保護、宿泊手配、輸送確保だけでなく、採用選考の一時凍結、被災学生に対する特例措置など秩序ある行動を自律的に行い、事故も騒ぎも生じさせなかったことなど、賞賛に値する行動を実践したのです。

そのため今年の新年挨拶では、経団連の川本裕康常務理事や連合の古賀議長は、大震災発生時における企業、地方自治体の姿勢だけでなく、従業員、職員の献身的な対応や行動、協力体制、絆などを日本人として誇りに思ったと述べたのです。これは、私たちも採用活動の現場で実際に見たことです。悲惨と失意の中での発見であり、大きな希望といってもよかったでしょう。

◇そして、2012年。今年の雇用情勢は、どうなるのでしょうか。

昨年末から新聞、雑誌で報じられている「景気観測」や「大予測」などを見ると、2012年の日本経済は「停滞感が強まる」と予想されています。その最大の要因は、欧米に対する日本企業の輸出不振が長期化するからだと指摘しています。これは、円高やユーロ高だけでなく、アジア経済、特に中国の停滞、失速、欧州の金融財政危機、金融市場の混乱、企業活動の破綻、個人消費の低迷が世界規模で拡大し、景気回復が望めないからです。

しかし、こうした悲観的見通しだけでなく、明るい見通しもあります。例えば、昨年12月に発表された経済同友会の「四半期予測」では「景気の現状は、緩やかに後退している」としたものの「今後は、緩やかに拡大する」と見ています。そして雇用については、過剰感が後退しつつある。というものです。

◇そこで新卒採用の展望です。一般労働者の雇用(ハローワークベース)と新卒の採用計画は、異なる動きをするので注意が必要ですが、新卒採用全体では、2012年卒の採用実績や2013年卒の採用計画を見ても明らかなように、新卒採用は流通、サービス業界などの採用意欲が活発になると見られます。

その結果、景気停滞の中でも全体としては、昨年より求人倍率は、改善されることになると見られています。しかし、問題は、学生に人気のある銀行や保険、エレクトロニクス、食品、エネルギーなどの業界は、前述したように輸出の不振、地域経済の停滞、海外金融不安などから採用減になると見られています。

そうなると学生は、ミスマッチによる就職難に陥り、流通、サービス業界は、応募者のない求人難という例年の構造がより拡大することになります。これによって企業の人材二極化も拡大するはずです。大手・人気企業による人材の独占という現象です。採用充足率は改善しても、こうした格差がより鮮明になるというのが今年の採用環境といえるでしょう。

◇新卒の就職問題については、今年は、大きな課題が3つあります。第一が、採用戦略の見直しです。ここ数年の経営環境の変化によって復興経済への対応ばかりでなく、グローバル化の進行、技術・サービスの環境対応、IT技術の発達によるビジネスモデルの転換などに伴う採用戦略の見直しです。採用人数ではありません。次世代事業に取り組む技術分野やレベルの見直し、営業・販売方法の革新によって採用するべき人材の転換が求められているのです。グローバル化もその一つです。そして、これまでの採用方法でよいのか、採用対象や採用基準の見直し、長期的な人材採用戦略の策定が新たな課題となっています。

次の課題は、一括採用の見直しです。これは、すでに人材採用に意欲的な企業が、一括採用の見直しを行い、採用時期を通年型にしたり、国籍を問わない採用を行なったり、契約型の採用をしたりすることで少しずつ新しい採用を試みています。とくに昨年末、ユニクロが発表した中途・新卒、外国人・日本人、在学中、卒業者の区別なきボーダレス採用は、まさしくこの脱一括採用の革新的な動きだったといえます。この動きが、今年は、グローバル採用に取り組む企業の中で急拡大しそうです。

三番目は、新倫理憲章への対応です。この新ルールは、インターンシップの正常化、採用情報の2ヶ月遅れ措置などで実績を上げてきましたが、これからは、採用内定時期の抑制が残された課題です。その指標となるのが医薬品業界の4月からの採用開始、総合商社の6月採用開始などの遵守です。その後には、全体の採用内定ピークの引き下げが課題となります。これについては、新憲章では明示していなかったのですが、内定時期を早くても6月以降に足並みをそろえることが産業界の課題です。大学教育の尊重と企業の倫理を掲げているので当然の行動といってもよいでしょう。どこまで産業界ができるのか、大学関係者は注視しています。今年の企業は、こうした困難な取り組みを通じて、震災後の「一陽来復」を実感できる一年にしたいと考えているはずです。

[12.01.10]
就職情報研究所所長 夏目孝吉

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