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2016.01.26 通年採用は、拡大する

数年前から新卒の採用活動において、採用時期を春だけでなく夏、秋あるいは年4回さらには随時採用する企業が増えてきた。これは、春採用で採用計画が達成できなかったという理由ばかりでなく、積極的に複数回の採用活動をして優秀人材を年間にわたって採用する通年採用の動きである。

昨年の例では、ソフトウエア、製造業、証券、保険などもこうした採用に踏み切った。この通年採用は、経団連の調査では、4社に1社と増加傾向であり、当社の調査でも年々増加している。なぜ通年採用が増加しているのか、何が問題なのか、今後の新卒採用の流れとなるのか、17採用の出発にあたって探ってみよう。


▼通年採用というとこれまでは、新卒の採用計画が充足できなかった大量採用企業や中小企業が目に付いた。しかし、最近は、こうした企業とは異なり、製造業や証券、保険、ITなどの大手企業が、大胆な通年採用に踏み切っている。先進的な3社の例をあげてみよう。

まず、大手IT企業A社。挑戦する意欲ある人にということで、自由な時期に自己の意思で活動できるように広く門戸を開いている。募集対象は30歳未満であれば、新卒・既卒を問わず、一度就職をした人でも再挑戦することができる。

次は、大手アパレルB社。同社は、急速にグローバル展開を進めているだけにグローバル人材への意欲は、どん欲だ。そのため同社は、グローバルリーダー社員枠を特別に設け、通年採用とした。同社の主張は、就職活動の主役は、企業ではなく個人だとして、誰かに決められたタイミングではなく、個人が就職活動をするタイミングを選べるべきだという。そのため大学1、2年生をはじめ新卒・中途、国籍などを問わない採用方法で一年中いつでも応募を 受けつける。だから応募開始時期や締切日は設けず、応募者が受けたいと思ったタイミングでエントリーし、選考に参加する仕組みだ。

三番目には、ベンチャー型のC保険会社。同社では、「新卒採用」という枠にとらわれずに、4月からと6月からの選考という2つのスケジュールで「定期育成採用」という新しい概念で採用活動を始めた。「学問を妨げず、もっとも適したタイミングを選択のうえ、応募してほしい」というのが採用方針。応募資格は「30歳未満であること」のみ。学生はもちろん、既卒者やフリーター、就業経験があっても応募できる。


▼前述の3社のねらいから通年採用の理由が見えてくる。それは次の5つだろう。

1.年齢、学歴、国籍を問わず広く人材を集める。
2.優秀人材を早期に確保できる。
3.時期に縛られずにいつでも採用選考活動ができる。
4.海外大学卒業者や留学、外国人採用、外国人留学生等に対応できる。
5.応募機会を逸した学生にも応募機会を提供できる。

こうした通年採用は、選考方法も通常とは異なる。だからA社では、No.1採用や就労体験型のインターンシップなど、多岐にわたるプログラムで選考する。まさに自己の最適なアピール方法で選考に臨んでもらい、その実力を発揮してもらう。B社では、実際に就業型のインターンシップをしてもらったうえで面接に臨む。C社の場合は、論文のテーマがハードなので提出者は、エントリー者の1割にも満たないという。

また優秀人材の早期確保ということでは、1、2年生でも合格水準の学生には、入社予約のパスポートを与えるという大胆な手法も取り入れている。この入社予約制度は、学生生活を充実させるというが、どうだろう。優秀人材ほど多様な道を次々と見つけることができるからだ。しかし、こうした採用手法は、多彩で個性のある人材が応募するのも確かだ。


▼通年採用のメリットは結構だが、通年採用の問題点もある。これまでのように就職情報の解禁日、面接・選考開始日などが多くの企業で申し合わされていれば、企業は、採用PRをはじめ企業説明会、リクルーターの配置日などが順次、効果的に設定できる。とくにリクルーターの手配や面接への対応は、膨大な時間と費用がかかるが、通年では、これまでの採用活動は根本から見直しとなる。あらたに通年型の採用PRや選考体
制を考えなくてはならない。

また、通年採用にすると応募学生の動きが読めず、採用活動が、暗中模索となる。通年採用は、本来、マイペースなだけに年間を通じた応募があるかどうかがカギとなる。採用担当者としては、応募状況がひどく不安になるはずだ。とりわけ採用市場において学生の就職人気が無い企業にとっては深刻だ。長期間、エントリーを受け付け、選考をするといっても応募者がどのように動くのか読めないからだ。やはり大企業や有名企業だけが可能な手法かもしれない。それに通年採用では、少数の自信ある若者と行き場のない多数の若者が応募するだろう。そのためにも応募者に納得のいく選考方法を工夫しなくてはならない。

「形だけの通年採用」という問題点もある。早い時期に採用計画数を達成した場合、その後に応募した優秀人材は採用出来なくなってしまうことだ。それを防ぐためには、人材評価基準を客観化するか、前期と後期で採用予定数を設けるかとなる。だが、これは、企業にとってはそんな簡単ではない。優秀人材は、早期確保が基本だからだ。そうなれば、学生にとって後期の応募は、無駄な労力を使うことになり、企業も後味の悪さが残るだけだ。


▼通年採用の拡大は、選考時期の拡大ばかりでなく、採用対象者の緩和、雇用形態や労働条件の見直しにもつながる。採用担当者の多くが予測し、期待する一括採用の崩壊の兆しも見える。最後にそうした今後の見通しについて3点ほどコメントしておこう。

1.ユニバーサル型で学生の就活は、厳しくなる
通年採用は徐々に拡大して対象も30歳以下という年齢制限だけになるだろう。しかし、この年齢制限は、法的に問題があるので、将来は撤廃の方向になるはずだ。まさにユニバーサル型採用になる。それだけに学生たちにとっては、ライバルは、増える一方で、ますます厳しい就職活動となるだろう。

2、キャリア教育が重要に
これまでの採用活動は、倫理憲章や「指針」があっためか大学生の3年生後期から4年生前期に集中していた。そのため大学の授業や学生生活に深刻な影響を与えていた。それが、通年採用になれば、採用活動がゆるやかに長期化するので学生は、低学年から時間をかけながらキャリアについて考え、進路を選択することになる。そのためにも大学は、キャリア教育を充実させなくてはならない。

3、「指針」は不要に
通年採用は、いつでも応募を受けつけ、選考し、内定者なら随時入社ということにもなる。だから採用活動の通年化を実施した上記3社のような仕組みが、経団連の「指針」に抵触しないと認められれば、スタッフや採用予算に余力のある大手企業が同じことをやるだろう。これによって一括採用の枠組みが一段と柔軟化、崩壊に向かう。そうなれば、当然のことながら「指針」は、不要になるだろう、あと3年ぐらいだろうか。



[16.01.26]
就職情報研究所 顧問 夏目孝吉

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